【フランスで高い評価を受ける即興演出のアーティスト】広島県広島市の生まれ。かわなかのぶひろの影響で、1979年、東京造形大学デザイン学科に入学。山本政志の8ミリ「聖テロリズム」に助監督として参加したのを皮切りに、長崎俊一、石井聰亙、山川直人、松井良彦らの作品に多数参加する。自らも16ミリ「サンタが街にやって来る」(82)を監督し、85年の8ミリ「はなされるGANG」でPFFに入選。その後はテレビドキュメンタリーの演出などを手がけ、95年の『ハリウッドを駆けた怪優/異端の人・上山草人』の独創的な構成・演出が高く評価された。97年、美術監督・磯貝俊裕のプロデュースによる「2/デュオ」で、本格的な劇場映画デビューを果たす。若いカップルの心のすれ違いを描いたこの作品から、すでにシナリオなしの即興演出というスタイルを確立し、国内以上に海外で注目を集めた。続く「M/OTHER」(99)は、子供を預かることになった同棲カップルの揺れ動く心情を描き、カンヌ映画祭で国際批評家連盟賞を獲得する。2001年には、アラン・レネの名作「二十四時間の情事」をリメイクした「Hstory」を発表(日本公開は03年)。主演にフランス人女優のベアトリス・ダル、撮影監督にジャン=リュック・ゴダールとのコンビで知られるキャロリーヌ・シャンプティエを起用し、本番とメイキングを1台のカメラに収めるという実験を試みた。次いで手がけた「不完全なふたり」(07)も、パリを舞台にフランス人のスタッフ・キャストで撮った日仏合作映画で、ロカルノ国際映画祭の審査員特別賞を受賞している。09年の「ユキとニナ」は、オムニバス「パリ・ジュテーム」(07)で起用した俳優イポリット・ジラルドとの共同監督作。演技経験のない9歳の女の子を主演に、親の離婚を乗り越えていく子供の友情と成長を繊細なタッチで描出した。【シナリオなしの実験的な映画づくり】80年代前半を自主映画運動が盛り上がる中で過ごしたが、そこから商業映画への道には進まず、個人映画、実験映画的な作風を貫いて、海外で評価されることで作家としての立ち位置を確立した。実質的な監督デビュー作「2/デュオ」以降は、明確なシナリオをあらかじめ用意せず、役者とのディスカッションにもとづく即興演出という独特のスタイルでの映画作りを続けている。毎日映画コンクールで脚本賞を受賞した「M/OTHER」では、諏訪とともに主演の三浦友和と渡辺真起子が脚本に名を連ねているが、これは三者の話し合いにより構成台本が作られたからだという。従来の映画製作の手法から大きく離れた実験的な精神で、アート系映画を放ち続ける異色の存在。フランスを拠点とするインターナショナルなタッグが続いているが、その一方で02年から母校の東京造形大学で教授をつとめ、08年には学長に就任している。