【ポップな映像で映画界を変革する新時代のクリエイター】福岡県生まれ。明治大学卒業後、CM制作会社・日本天然色映画(現・ニッテンアルティ)を経て、1987年よりフリー。山口美江が「しば漬食べたい」とつぶやく『フジッコ漬物百選』、山崎努と豊川悦司の卓球バトルをスーパースローモーションで撮影し、ACCグランプリに輝いた『サッポロ黒ラベル』、SMAPがガッチャマンに扮した『NTT東日本』など、数々のヒット作を生み、CMディレクターとしての地位を築く。 映画にも造詣が深く、82年、大学在学中に製作した「はの字わすれて」が、PFFで入選。88年のオムニバス「バカヤロー!・私、怒ってます/遠くてフラれるなんて」で劇場映画監督デビュー後、しばし映画からは遠ざかる。「夏時間の大人たち」(97)、「Beautiful Sunday」(98)と、90年代に入って相次ぎ発表された作品には、人物や事象のアンビバレントな視点など、中島作品の特徴がすでに見てとれる。その後も、『世にも奇妙な物語/ママ新発売』(01)、『私立探偵濱マイク/ミスター日本・21世紀の男』(02)などエッジの利いたテレビドラマの演出で気を吐きつつ、04年、初のメジャー作品「下妻物語」を発表。我が道を行くふたりの女の子の青春を、ポップな映像とリズム感あふれる語り口で一気に見せ、興行的にもヒットを飛ばすとともに、ヨコハマ映画祭作品賞・監督賞、カンヌ・ジュニア・フェスティバルのグランプリなど、数々の賞を受賞した。06年の「嫌われ松子の一生」ではCGやアニメーションなどを盛り込み、壮絶なヒロインの一代記を音と映像をシンクロさせたミュージカル風の寓話に仕上げ、文化庁芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。08年の「パコと魔法の絵本」では、後藤ひろひと作の戯曲『MID SUMMER CAROL/ガマ王子vsザリガニ魔人』をもとに、豪華キャストを奇抜なメイクや衣裳で飾り立てたうえ、3DのフルCGキャラクターへと転換させるという、実験的娯楽作の領域に踏み出した。最新作は湊かなえのベストセラーを映画化した「告白」(10)。【多様な技法による斬新なビジュアル】大林宣彦、市川準らに連なるCMディレクター出身の映画監督のひとり。初の劇場用映画を手がけた80年代後半は、まだ“異業種監督”への風当たりが強かったが、デジタル時代の21世紀に入り、さまざまな分野のクリエイターにとって、映画を撮る行為がある種のステータス的な意味合いしか持たなくなった。そんな風潮に乗り、さりげなく登場した「下妻物語」の想定外の面白さは、中島のCMディレクターとしての功績にも改めて光を当てるという逆転現象を生んだ。多様な技法を結集させた斬新なビジュアルの裏で語られるのは、ひたすら幸せを求めて迷走する女性や、少女の記憶に残りたい偏屈な老人などが織り成す普遍的な物語である。クライアント第一のCM界を牽引してきた中島は、観客を中心に据えることで、一見不釣合いなパッケージと中身を、誰の目にも楽しく心に響くエンターテインメントとして融合させ、停滞気味の映画界を革新し続けている。