大分県大分市の生まれ。1986年、“ミス原宿コンテスト”でグランプリを受賞したのを機に芸能界入り。萩尾望都のコミック『トーマの心臓』をモチーフに、金子修介監督が映像化した「1999年の夏休み」88に“水原里絵”の芸名で出演して、女優デビューする。4人の少女俳優たちが少年役に扮したこの作品で、同性の先輩に憧れを抱く美少年のひとり・則夫を瑞々しく演じ、鮮烈なデビューを飾った。この年は、親友の自殺を発端に友情のもろさとかけがえのなさを描いた村上修監督「ステイ・ゴールド」にも出演。さらにJR東海『クリスマスエクスプレス'88』のCMにも起用され、不貞腐れた顔でホームに佇みながら、列車から降りてくるはずの恋人を待ち続ける少女の役で、一気にお茶の間の注目を集める。翌89年、役名と同じ“高原里絵”名義で主演した金田龍監督の幻想ホラー「満月のくちづけ」では、ローマ国際ファンタスティック映画祭最優秀主演女優賞を受賞。この時期、歌手としては本名の“深津絵里”で、女優としては“高原里絵”の芸名で活動するとされていたが、結局“高原”名義で出演した作品はこの「満月のくちづけ」一作きりで、歌手活動もそれほど長くは行なわれず、ドラマ初出演作のTBS『予備校ブギ』90から芸名も“深津絵里”に一本化されて今日に至る。91年には再び村上監督と組んだ「真夏の地球」で、モテモテの姉とは対照的な妹の役でボーイッシュな魅力を振りまいた。以後はテレビドラマを中心に活躍。フジテレビ『愛という名のもとに』『二十歳の約束』92、『悪魔のKISS』93、『この愛に生きて』『若者のすべて』94、日本テレビ『大人のキス』93、『ベストフレンド』95など話題のドラマに立て続けに出演し、着実に演技力に磨きをかけていく。連ドラ初主演作となったフジテレビ『最高の片想い』94や、光野道夫監督「バースデイプレゼント」95の助演などを経て、96年、見ず知らずの男女がパソコン通信でメールのやり取りを交わすうちに、少しずつ心を通わせ合う姿を丹念に描いた森田芳光監督「(ハル)」で映画初主演。極端に台詞が削ぎ落とされた中、恋人を亡くした悲しみや、新たな伴侶を得たときめきや戸惑い、ささやかな誤解が生む嫉妬などを、細やかな表情の変化のみで繊細に演じきり、さらなる評価を得る。続いて97年には、織田裕二主演のフジテレビ『踊る大捜査線』に出演。現実的でクールだが、過去にまつわるトラウマを抱えた正義感あふれる女刑事・恩田すみれ役を溌剌と好演し、のちに映画化もされメガヒットとなるシリーズの成功に大きく貢献した。98年の同局『きらきらひかる』では、個性あふれる顔ぶれの共演陣に囲まれ、一般人の目線を忘れずに遺体や事件と向き合う新人監察医役で堂々と主演。こちらも、のちにスペシャル版が何度も制作される好評を得て、人気・実力ともにトップクラスの女優のひとりとなる。2000年代に入ってからは映画の活躍も顕著になり、『踊る大捜査線』シリーズを手がけた本広克行監督の「スペーストラベラーズ」00では、強盗に押し入られた銀行で人質になり、事態をややこしく引っかき回す行員役でアンサンブルの一角を担ったあと、森田監督と久々にタッグを組んだ「阿修羅のごとく」03に出演。向田邦子脚本のテレビドラマをベースに、四姉妹の悲喜こもごもをコミカルかつシニカルに綴った本作において、鋭い洞察眼を持ちながらも恋には不器用な三女を巧演し、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞に輝いた。06年の小泉堯史監督「博士の愛した数式」では、80分しか記憶がもたない“博士”に日々接するうちに、愛情にも似た不思議な絆で結ばれていくシングルマザーを好演。三谷幸喜監督「ザ・マジックアワー」08では、ふたりの男を手玉に取りつつ、作品の鍵を握る魔性の女を、上品な色気を醸し出しながら演じた。09年、西原理恵子のコミックを森岡利行監督が映画化した「女の子ものがたり」では、自身の過去を振り返りながら再起のきっかけを掴む、スランプに陥った漫画家の心の機微を体現した。そして10年の李相日監督「悪人」では、魅力のひとつでもあった年齢不相応の若々しいキュートさを完全に封印し、適齢期を過ぎた若くはない女の虚無や孤独をにじませつつ、恋に落ちてしまった殺人犯との行くあてのない逃避行の過程で、たくましくも美しく変貌を遂げていくヒロインに肉迫し、モントリオール世界映画祭で最優秀女優賞に輝いたほか、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞している。テレビドラマはほかに、フジテレビ『彼女たちの時代』99、『天気予報の恋人』00、『カバチタレ!』01、『恋ノチカラ』『空から降る一億の星』02、『スローダンス』05、『西遊記』06、『CHANGE』08、TBS『末っ子長男姉三人』03、NHK『川、いつか海へ・6つの愛の物語』03など多数。舞台活動にも意欲的で、『陽だまりの樹』95、『キル』97、『半神』99、『農業少女』00、『贋作・桜の森の満開の下』01、『走れメルス・少女の唇からはダイナマイト!』04、『あわれ彼女は娼婦』06など、野田秀樹ら名演出家からの信頼も厚い。イギリスのサイモン・マクバーニーが谷崎潤一郎の世界に挑んだ『春琴』08の演技で、紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞し、同作は09年にロンドンのバービカン・センターでも再演された。