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アートなんかいらない! Session2 46億年の孤独
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Session1で示された、タイトルのテーマ、つまり「アートなんかいらない!」というテーマは、このSession2でまるで違う方向へと導かれる。最初のシーンでハチ研究科の冨永さんという老人が説明するハチとの対話。このシーンの活き活きとした描き方が素晴らしい。小さな目を輝かせてハチと対話する方法について延々と熱弁を振るう冨永さんのシーンが、最後の最後である人物と接合するようにできている。蜂の巣の造形は自然界にあり得ないものだ。しかし自然界にあり得ない造形をハチと対話しながら不思議なオブジェを次々と作り上げるのだ。このお話を聞いているだけでお腹いっぱいになるのだが、要するにこれがアートか?ということだ。冨永さんとハチは間違いなく対話を繰り返し、存在するはずのない造形を作り上げてゆく。 しかし・・・・ これに意味はあるのか? 映画は地球が生まれたとされる46億年を玉川上水沿いを歩くことで体現しようというグループを取り上げて進行する。彼がの会話が映画の要所要所で示されて、羽村から半蔵門までの46キロを、地球の生誕から現代に至るまでを身を以て体験しようという試みだ。 Session1で丁寧に示されたアート界の現実を離れて、この映画は人間について問いかける。アートが人間に与える役割。人とはなにか?しかし、時としてあまりにも単調で難しい説明を聞かされて、見る側が辛くなってくると、画面に黒点が生まれまるで黒い日の丸のようにスクリーンを覆う。大島渚監督の『少年』を思い起こさせるような黒い日の丸は、過激な身体改造を繰り返す人びとや、アートと医療の関係など、それなりに説得力のある説明に水を差すように画面を暗転させる。 そして最後に荒川修作が設計した天命反転住宅をゴールにしている。 正直これほど感動するラストを示すとは驚きだった。天命反転住宅の中で荒川修作の薫陶を受けた大浦信行さんと本間桃世さんの会話で、この映画が作られた目的や動機がじんわりしめされる。表現の不自由で自らの作品が不遇な目に遭った大浦さんの言葉は極めてリアルだ。そしてまたこのシーンも暗転し、最後に本間桃世さんから荒川修作の家族についてナレーションが入る。荒川の兄弟は身体的に恵まれない、社会的弱者が多かった。この暗転したシーンで本間桃世さんがささやくようにお話される内容に衝撃を受け、この映画の存在意義を最後に突きつけられる。 アートなんかいらない! とは、音楽や演劇や映画だって、何もかもいらない。もっというと人類そのものも地球にとって本当に必要なのか?テーマがアートを超えて人類という大きなテーマに突き当たったとき、冒頭の蜂研究科の冨永さんのやっていることと、荒川修作が残そうとした作品の意味が完全に合致する。 このラストは心から感動できた。 空っぽの山手線がこの映画の答えだったのだ。
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