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鑑賞日 2023/01/04  登録日 2023/01/05  評点 - 

鑑賞方法 映画館/東京都/TOHOシネマズ日本橋 
3D/字幕 -/-
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真の目的

「朝が来る」「ハケンアニメ!」などの辻村深月の原作を原恵一監督が手掛けた映画。不登校の七人がある日から鏡越しに孤城へ招かれて、願いを叶える鍵を1年がかりで探すというドラマ。原作は漫画にもなっているようだ。

とにかくドラマの構成が素晴らしくて、主題もしっかりしている。ネタバレになるので何も書けないが、この映画は、不登校の子供を描く子供のための映画では決してない。むしろ大人、もっというと教師あるいは教育関係者が目にとどめておく映画ではないか。

聞くところによると、今どきは不登校がクラスに数人いて、その数は増え自殺者も多いようだ。では、この問題がいま起きた現象か?というと言うまでもなくそうではない。いじめや不登校は昔からあった。この映画にも出てくるが、行き場を失った子供、学校では疎外され、家ではレイプされそうになるなど、社会のどこにも行き場を失った子供がこの社会に存在する。その疎外された不登校生がこの孤城に集まる、という物語はアンチテーゼだ。もはや社会全体が孤城を求めている。

噛み合わない七人の会話は最後の大団円で想像を絶するエンディングへと向かう。とくにこの七人の中でリーダー格のアキ。彼女のエピソードは涙なくして見ることができない。彼女の与えられた環境はあまりに過酷で現実的だ。

そしてこの映画には”死”が描かれる。”死”に直面した子供のトラウマが生み出したこの世界。いずれも孤独が映画全体を支配する。失ったもの。あるいは失われてゆくものを直視して目をそらさない。このドラマが終始魅力的なのは、現代に存在する現象を直視している点だと思う。

不登校の主人公こころが、担任の教師の訪問を受けて、母親が厳しくその教師を叱責するシーンがある。この母親は、映画の冒頭では、娘の不登校にうんざりしているように映る。なぜ母親の姿勢が変化したのか?について説明はないが、しっかりとドラマがその理由を説明している。これは何を意味するのか?それは、この問題が子供の問題ではないことを示している。親や教師、大人、あるいは社会の仕組み全般を大きく変化させないとこの問題を永遠に消し去ることは難しい。

ファンタジーとして作られたこのドラマの真の目的は、もっとほかの部分にあると思う。