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ジャッキー・チェンの本邦初公開作品「ドランクモンキー酔拳」を観たことで映画の虜に。仕事帰りのミニシアター通いが日課になっています。

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太陽がいっぱい

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鑑賞日 2025/03/26  登録日 2025/03/27  評点 90点 

鑑賞方法 映画館/福岡県/KBCシネマ 
3D/字幕 -/字幕
いいね!レビューランキング 655位

“思ったより悪くない”

何もない田舎の村で起きた殺人事件をきっかけに権力者と警察官が欲望と正義のはざまで命を賭すことになるミステリー映画。冒頭から警察官は仕事熱心というより適当にやり過ごすタイプに見えたのだが新人警官が規則を破って聞き込みをしている最中に暴行され殺されたことから封じ込めていた良心が頭をもたげてきたように思えた。
身内の女性のセリフで10年前の事件に言及していたが、おそらく行き過ぎた正義感のせいで不遇な立場に追いやられたように聞こえた。

殺人事件の犯人は村長と神父。
あっさりと主人公に自供する。
その際、知人の検察官に連絡するよう依頼し表沙汰にならないよう配慮を求めていた。殺された村人が酒によって斧を振りかざしてきたのでやむおえず正当防衛した、つまり事故ということで結論付けていた。
しかし被害者の妻への事情聴取で村長から夫が取り引きを持ち掛けられていたことが判明。村長は神父と共謀して被害者宅(あわよくば美人の妻もろとも)と農地を手に入れようとしていたのである。つまり殺人は間違いなく計画的に行われ、権力によって闇に葬られようとしていたのだ。

主人公は村長たちがタバコと酒の密輸で私服を肥やしていることに気付いて現場を押さえる。検察官も含まれる権力者に楯突くのだから相当な覚悟だ。ここからは銃撃やら斧による攻撃やらであっという間に修羅場となる。背中に斧を突き立てられた主人公の断末魔の悲鳴が実に生々しくて頭から離れない。首謀者を一人づつ倒した主人公もまた深手を負い、川面に映った自分の顔を見つめながら“思ったより悪くない”と呟いて息絶える。この圧倒的な虚無感はどう表現したらいいものか。オープニングでトラックの荷台から道路に落ちたおんどりがラストに再登場、殺人現場で餌をついばんでいた。直接物語に関与はしていないし、狂言回しという立場でもない。縁もゆかりも無い土地で起きた凄惨な事件の生き証人とでも言えばいいだろうか。唯一言えるのは小動物の視点を借りたことで寓話性と客観性が強調されたと言うことだ。おどろおどろしい物語なのに目を背けることなく最後まで凝視できたのは雄鶏のイナセンスに依るところが大きい。