功罪両面を描くまでには至っていないが…

ナポレオン・ボナパルトの生涯を描いた、リドリー・スコット監督による伝記映画。

戦闘シーンの迫力は素晴らしく見る価値があり、ナポレオンと妻ジョセフィーヌとの愛情を描く美しさもよく出来ている作品だと思った。ナポレオンの生涯の全体、あるいは政治指導者としての功績まで学び取ろうとするには無理があるが、人物像の概観は理解できる物語だ。とはいえ、ナポレオンによって導入された近代の諸制度も多々あるので、もう少しそういった成果に視点を当ててもいいように思うが…。「英雄か、悪魔か」というキャッチコピーを使うならばなおさら。

19世紀が舞台の戦争映画としては非常によく出来ており、リドリー・スコット監督の後継者としてこういう映像をCGに頼ることなく撮れる人物が今の映画界にいるのか、心配になるくらいだ。子どもを産めなかったジョセフィーヌの心情のとらえどころは難しい部分だと思うが、時代遅れの描写とも思わなかった。