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母性(2022)
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原作は読んでいないが、本作の構成、ディテールの不自然さが目立って違和感ばかり感じる作品だった。 まず冒頭女子高生の首つりシーンで観客にショックを与えるあざとい演出に比して本作の登場人物らが全く無関係であるという構成。 また母性が女性に本来的に備わっているという定説に対して疑問を投げかける意義は理解できるが、女性が慈しむ母性と慈しめられること(ずっと娘でいたい)と言う2種類しかないような単純化には違和感が強い。 本来多くの女性がまず娘として生まれ育てられる過程で最初の同性で自分を育ててくれる存在の母親と密接な関係性(子が親に好かれたいのは生存本能に由来する点が大きい)を築くのだろうが、生存するための社会性を学校や親族、学校生活で肉親以外の人間との交流から多様な考えや価値観を学んで行くプロセスが全くないということは考えにくいし、それを奪う描写は皆無だ。 特に父親が全く登場してこないのは母子家庭という設定なのか?重要な要素が全くわからない。 大地真央の過干渉母と戸田恵梨香演じる依存症の娘ルミ子の関係性は時たまみられる現象だが、それを支える経済的自立性も不明。 火事で母親と家を失うが、誰も住んでいない実家に移転せず、姑のいる夫の農家に同居する必然性が不明。 姑の同居していることに散々嫌味を言われながら経済的に困窮しているかのような口ぶりに対する嫁ルミ子の従順さあるいは鈍感さ(相当なストレスがあるのに)理解できない。 母を失った代わりとしての義母に対する依存?とはその保護者としてのキャラや関係性が違い過ぎて不自然すぎる。 精神的に自立していないルミ子が娘を愛せない母親になる素地がある事は共鳴できないが理解はできる。 ただ清佳が祖母が結果として犠牲となって命が救われた事実を知って母親ルミ子に謝罪し、母親が娘を殺す(首を絞める)?という展開が理解できない。 挙句に父親の無気力さを論破した気丈な娘が自殺(首吊り)を計るという展開が最初の無関係な首つり事件との帳尻合わせを狙っただけの陳腐さにあっけにとられる。 またそんな母親との関係性を離脱するために娘が自らの家庭をつくることは世間的によくある話だ。 本作の娘清佳のように父親も頼りにならない存在だと拍車がかかるだろう。 それにもかかわらず清佳が妊娠してまた娘を出産するエンディングが母娘関係の難しさを予感させるというあざとさばかりが印象に残る。 本作で同事象を母親と娘の立場から個別に描く事で受け止め方違いはわかるが、どちらも一定の真実なのだろうし、ただ映画としてそのアプローチは効果的でもない。 テーマが面白いだけに残念な作品だった。
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