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鑑賞日 2025/03/19  登録日 2025/03/21  評点 - 

鑑賞方法 映画館/神奈川県/横浜ブルク13 
3D/字幕 -/-
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不安定感を楽しんでみる

あの「野生の島のロズ」を押さえてアカデミー賞長編アニメーション賞を取ったとなれば、観ないわけには行きません。
観客席もほぼいっぱいの劇場で観られてうれしかったですが、けっこうたくさんいたお子さんたちにはどう響いたのか、知りたいものです。

つまり「分かる」「分からない」でいうと、けっこう分かりにくい、かなりアーティスティックなアニメーションだなあと思うからです。
こういう作品が世界各地で生まれているアニメーション映画の現状というのは喜ぶべきことでしょうが、こうやって日本の劇場で観られるのは多くはないので、これを機にさらに増えていくといいなと思います。(でも集中してみている子が多かったなあ)

で、ストーリーは、あるようでないようで、ないようであるような、そんな展開で、でも、ここが地球だとしたら(この辺すでにネタバレですが)遠い未来のこと?それとも別の惑星のこと?それとも「ノアの方舟」世界の別の世界線の話?など、いろいろ考えさせられてしまうのですが、あまりリアルに設定を追求するべきではないのでしょう。

アニメーションは間違いなく「絵画」「音楽」と地続きなのだな、ということを感じました。
つまりある程度の具体的描写を入り口にして、そこから先は、ある種作り手たちのイマジネーション(否定的にいえば「思いつき」)がどんどん広がっていくものだということですね。
そのイマジネーションを誰もが納得してくれるように広げつつちゃんと折りたたんでいってくれるのが、ピクサーやディズニーの諸作や、「野生の島のロズ」などが追究していることで、本作のように、ぶわっと広げて、それをどう感じるかを追究する作品も、一方にはあるのだなということでしょう。
その点で、謎はいっぱい散りばめられているのだけれど、それをどう解くか、または放置するかは、観るもの次第でいいということですよね。(美術や音楽もそういった芸術だと思います)

そういった「広げ方」含めて、絵のタッチや(動物たちは必ずしもきっちり描きこまれていない。むしろドット絵を思わせる)物語のいい意味での曖昧性を含めて、私は「オープンエンド」の「RPGゲームのアニメーション」を見せられているようにも感じました。
それでいて、ラストの主人公たちの一瞬の「共闘」にほろっとさせられたり、でも、その後にあの巨大生物が泳いでいる映像を見ると、「え?また大水が?」などと、ふくらみっぱなしで終わりました。

美しい画面と、躍動する快感と、投げ出される不安定感を楽しんでみる、そんな映画ですね。