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落下する夕方
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本作でのリカ(原田知世)と華子(菅野美穂)のような関係はなかなか理解されにくいだろうなと。健吾(渡部篤郎)という男(これも態度がいまいちはっきりしない)の元カノと今カノが同居することになるという設定。そこに健吾自身も加わっての奇妙な三角関係が構成される。好き嫌いの間に明確な一線を引く傾向が強い欧米なら修羅場となるであろう設定。でもここでは擬似家族的な空間が成立している。 いったいなぜこういう曖昧な関係が成立することになるのか? どうも自分は3人それぞれが互いをきちんと見つめていないように思えてしまう。それは今つきあっているはずの健吾と華子の関係においても。たしかにふたりはキスを交わしていた(リカがそっと覗き見ている)。でも華子の心ここにあらず的な行動は健吾の気持ちを翻弄してもいる。 映画のなかで語られるエピソードとしてリカと華子はそれぞれ人の不幸に関わってしまったという心の傷を抱えている。リカは先輩の事故に、華子は弟の障害にそれぞれ責任を感じている。というかそこから逃れようと苦しんでいるようなところがある。そのことが相手をきちんとみつめることへの怯えに繋がっていたのかもしれない。親しくなるということはそれだけまた自分も傷つく可能性が高まるということでもある。ポケットに収まって誰からも傷つけられることなくまったりと暮らしたい。でも生きるということが傷つくことと不可分ならばそんな生き方は有り得ない。 現実から逃げていたことに気づいたリカがもう一度自身を見つめ直すまでの静かな時間が描かれていたように感じた。それは夕日が落下していく速度のようにゆっくりとしたものでなければならないのだろう。その時間はていねい過ぎるぐらいに描かれていたけど、演出や演技が内容にもうひとつ追いついていない気がした。
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