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鑑賞日 2025/04/10  登録日 2025/04/11  評点 75点 

鑑賞方法 映画館/神奈川県/TOHOシネマズ上大岡 
3D/字幕 -/-
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思いはきっと伝わる

 主演を務める三女優の競演が見たいというのがまずあった。彼女たちがあの「花束みたいな~」と同じ監督・脚本による采配でどんなドラマを見せてくれるのだろうかと。そしてその期待を裏切らない出来だったと思う。もちろんその設定の強引さには最初は驚かされたけれど終わってみれば言いたかったことがしっかり伝わってくる仕上がりになっていたと思う。少なくともそこは片思いでは終わっていない。
 前作の「ファーストキス」同様、ファンタジーに傾いた坂元脚本。シリアスな男女関係からいったん距離を置きたかったのかファンタジーの連作になっている。こうした傾向は以前からあったのか自分は全仕事を追っているわけではないのでわからいないけど、恋愛とファンタジーは昔から相性がいいわけで、ある意味王道の作劇を楽しんでみたかったのかもしれない。
 もっとも本作はタイトルからしても恋愛映画と捉えられるかもしれないけどそうではない。それよりも大きな愛に重点が置かれていた。恋愛テイストはその一部といった印象。
 ファンタジーであるから「ファーストキス」の時同様ツッコミどころはあちこちにある。たとえば彼女たちの背比べシーン。彼女たちは成長するわけがないのだが、それでは子どものままの芝居になってしまい広瀬すずらの出番がなくなっちゃう。まあご都合主義の最たるものです。でもそれを楽しんでいるような風情が感じられ、自分も気持ちよくその嘘に付き合える。
 若い3人にしてはやけに贅沢な共同生活などなど不自然な演出は冒頭から連続していたのに鈍感な自分は気づかない。コンサートのシーンになってようやく「そういうことだったの?」と快い驚きを感じることができた。ネタバレ厳禁な映画。
 そういったファンタジー的作劇の嘘はともかく現実世界で犯人に接近できてしまう被害者家族というのは強引な筋立てではあった。おそらく遺された者のやり場のない怒りといった強い感情を画面に深く刻みたかったのだろう。
 それにしても喪失感から抜け出せない(西田尚美演じる母のような)人が見るには辛い映画だったかもしれない。いやむしろそのような人々を癒すような作劇だったか。いずれにしろ終盤のコンサートシーンが切なく印象的だった。