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鑑賞日 2025/03/23  登録日 2025/03/25  評点 85点 

鑑賞方法 映画館/神奈川県/イオンシネマ座間 
3D/字幕 -/字幕
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カーディナルレッド、選挙で流す血か。

世に選挙は数多い。政治家の選挙は、有権者、ライバル政党などの兼ね合いで、大げさな茶番劇になって
しまう。民間の取締役会でも株式の所有で力関係は変わる。それではカトリック教会のコンクラーヴェとは
どのような選挙なのか、興味津々で劇場に向かった。

まずはトマス・ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)の後ろ姿に導かれて、観客はヴァチカンのカトリック
総本山に達する。ローマ教皇が心臓病で急死、首席枢機卿のトマスがコンクラーヴェを仕切ることになる。
映画空間を占めるヴァチカンの建築物と内装。ドキュメンタリー映画のテーマでもいい最上の映像で、
人間ドラマが繰り広げられることになる。衣装も完璧、実に素材感と美しさを伝える。この環境でキャリアの
長い俳優たちも発憤せざるを得ない。老境に達した俳優たちも、顔のシワ、シミまでが役作りに利用できる
めったにない機会、レイフ・ファインズ、S・トゥッチ、I・ロッセリーニ、とベストの演技が引き出される。

首席枢機卿といえども、教皇しか知らない事実は、丁寧に掘り起こさなければならない。間際に枢機卿に
任命したアフガニスタン・カブールのベニテスも到着する。すでにコンクラーヴェ前哨戦から白熱する。野心を
隠さない保守派のイタリア・テデスコ枢機卿、アフリカ出身のアデイエミ枢機卿、穏健派のカナダ・トランブレ
枢機卿などがマスコミの下馬評の上がる。トマスはリベラル派のベリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチ)を推す。
伝統のシスティーナ礼拝堂に100名以上の枢機卿がカンヅメになる。
権力の暗闘が凄まじい。アフリカ初の教皇を目指すアデイエミ枢機卿は、過去の性的スキャンダルを暴露
される。件の被害シスターをヴァチカンに送り込んだのがトランブレ枢機卿。
首席枢機卿としてコンクラーヴェが適正に執行されなければならない。トマスは職務に忠実に励む。保守
過激派のテデスコ阻止のため、ベリーニ推薦の枢機卿を固めるが票が伸びない。
ローマではイスラム過激派のテロが頻発した。システィーナ礼拝堂も被害に遭う。テデスコ枢機卿はヴァチ
カンが進める融和主義を拒絶し、イスラム過激派との戦いを宣言する。そこにカブールのベニテス枢機卿が、
戦争の何を知っていいるのか、と昂然とテデスコを批判する。アフリカ、中東と戦場の教会を支えたベニテス
に支持が集まった…。

重厚な演出、圧倒的な臨場感でコンクラーヴェを描いた。現代のリベラルと保守の断裂を宗教の場にも再現し、
LGBTの配慮までする、視野の広い傑作となった。