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鑑賞日 2025/04/12  登録日 2025/04/15  評点 70点 

鑑賞方法 映画館/東京都/109シネマズグランベリーモール 
3D/字幕 -/字幕
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ロバート・ゼメキス監督のウィンドウズ活用術。

人気と実力を併せ持ったロバート・ゼメキス監督の新作だが、70歳を超えて冒険精神を失わない野心作に
驚くしかない。原作はグラフィック・ノベルで、画の力で時間の流れを定点観測したようだ。カメラは動かず、
物語の中心である居間を写す。ここで繰り広げられる住人たちのミニドラマが、一つの時代づつ切り取られ、
時間軸をシャッフルしてコラージュされる。
窓の外の世界は、植民地時代のお屋敷フランクリン邸が鎮座するが、道路を走るクルマや馬車などはミニ
ドラマの時代に合わせて代わる。もちろん部屋のインテリアや家具なども時代に合わせる。やはりラジオ、
ブラウン管テレビ、壁掛けテレビ、など時代を主張する。アメリカ映画の時代考証の確かさは、いつも感心
するばかりだが、細切れになっても一部の狂いもなく再現される。

人間ドラマの中心を担うのが、アル(ポール・ベタニー)とローズのヤング夫妻。アルは第二次大戦の帰還
兵士でこの家を買って住むことになる。リチャード(トム・ハンクス)が生まれ育ち、ガールフレンドのマーガ
レット(ロビン・ライト)を連れてくる。なんとトム・ハンクスの顔をCG処理でつやつやの若者顔。この親と子の
世代が一番入念に描かれべきなのだが、それも点描で時間軸も前後する忙しさ。
他にも飛行機乗りの男の一家や発明狂の夫婦の時代などがある。スペイン風邪からコロナ・パンデミックの
マスク姿までもが挿入される。やはりミニドラマは詰め込みすぎの感じがする。登場人物の整理が必要と
思う。先住民と黒人家庭のドラマが唐突に感じられることで、やはりアメリカは白人の国なんだな、と逆説
的に浮かび上がるが…。

ここまで徹底的に俯瞰された映画では、登場人物は細分化され、言葉の違う先住民のドラマも描かれる。
さらには恐竜たちが跋扈する姿さえある。ここまでしなくてもいいのに、と思ったが、そこまで凝ることが、
この作品の命でもあるようだ。場面転換も重要な役割を課せられる。ここではウィンドウが最大限に活用
される。ウィンドウを開くことで次のシーンが始まる。パソコン時代のシーン転換で、革新性は紛れもなく
存在する。古典的なワイプもなかった。フェイドアウト・フェイドインのような映画そのものの息づかいは
否定され、舞台は動かないのだけれど、たいへん忙しい映画となった。