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鑑賞日 2025/04/17  登録日 2025/04/17  評点 78点 

鑑賞方法 テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 
3D/字幕 -/-
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 戦後間もない1950年に実際に起きた金閣寺放火事件を題材にした三島由紀夫原作「金閣寺」の映画化だ。実際の事件に三島が独自の解釈を加えた原作に、さらに市川崑監督が独自の解釈を加えている。
 金閣寺(本作では「驟閣寺」)の青年僧が犯人だったというかなりショッキングな事件だったが、これが現代劇初主演となる市川雷蔵が、時代劇で見せる色気を封印し、ストイックに演じている。
 警察の取り調べのシーンで始まるが、何を聞かれても犯人の溝口は一切、口を開かない。次のシーンでは一気に戦時中にさかのぼり、溝口が父親の書状をたずさえ、驟閣寺住職の老師(中村鴈治郎)を訪ねてくる。ここでも溝口は相づちを打つ程度で言葉を発しない。最近亡くなった溝口の父親は若いころに老師と修行を共にした仲で、息子を驟閣寺で修行させたいと手紙に書いてあり、老師は快く受け入れる。溝口は持参した米の袋を受け取ろうとした修行僧がうっかり落とし、土間に米をばらまいた瞬間、初めて口を開く。「バ、バカッ。も、もったいないじゃないか」。溝口は吃音者だったのだ。
 溝口は父親の影響もあり、驟閣寺を異常なほど崇拝している。母親(北林谷栄)が訪ねてきて、驟閣寺本堂に入ろうとしても絶対に入れさせない。母親が父親に隠れてしていたことを知っており、母親を不潔視していたから許せないのだ。
 終戦を迎え溝口は修行僧が入る大学に通わせてもらう。寺は国宝になり、観光客の拝観料でうるおい出すと、老師も俗物化していく。大学で知り合った戸苅(仲代達矢)はからだに障害を抱えていたが、むしろそれを売り物にして、女性をむさぼっていた。女性の一人にお花の師匠(新珠三千代)がおり、戸苅から別れ話を切り出された時にかたわ呼ばわりし、戸苅に逆上される。寺が舞台とはいえ、出て来る人間は俗人ばかりだ。
 溝口は美しい驟閣寺が汚されるのが許せずに自分で火をつけたのだろう。