人々の暮らしを打ち砕く軍部。

念願の中国料理の店をオープンさせた祖父と家族の幸せは、予想だにしない（後に光州事件と呼ばれる）軍部が市民に銃口を向けた歴史的悲劇によって打ち砕かれる。その有り様を孫のチョルスの視点で描き出す。

光州事件を扱った映画は、「光州5・18」「タクシー運転手　約束は海を越えて」などで詳細に描かれたが、本作はその地に住む市井の人々を描き出すもの。

仲良しだった家族のお父さんが軍人で、チョルスのお父さんが軍に追われる身であることから、その関係にも亀裂が入る。

市民が虐殺された要因は、共産主義を弾圧する名目で恐怖政治を敷いた当時の大統領にあるのだろう。そう考えると「ソウルの春」で彼が実権を握らなかれば起きなかったはずの事態であり、なんとも悔しいが、こうした市民目線の作品で時代を記録するスタッフに二度と起こさせないという気概も感じる。