男性      女性

※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。

NEWS

KINENOTE公式Twitter

鑑賞日 -  登録日 2025/01/10  評点 85点 

鑑賞方法 映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 
3D/字幕 -/-
いいね!レビューランキング -位

これまでと印象が変わってしまった。

この映画をスクリーンで観るのは初めて。改めてスクリーン(劇場)で観てみると、ツァラ・レアンダーの美人っぷりに驚く。こんなに美しい人だったろうか?そして、こんなに印象的な歌ばかりだったろうか?さらにヴィリー・ビルケルの自殺に至る葛藤の描かれ方でこれまでとは異なる印象を受けた。

いままでヴィリー・ビルケル演じる将校はプレイボーイで、流刑でやってきたツァラ・レアンダーに何を今さら罪悪感を抱いているのか、と思っていたが、改めてこの映画を観ていると、彼の小切手偽装は罪になるとは露も思わず、まさかそれが大罪となり、自らの罪を彼女に押しつけてしまったことへの負い目と贖罪ゆえの自殺のように思えた。つまり、ツァラ・レアンダーは勝手に罪を背負い、自ら有罪、流刑になり、勝手に身を引き、孤独のところを愛してくれる男に拾われる、というお話に見えたのだ。事実、ツァラ・レアンダーとヴィリー・ビルケルが向かい合うシーンは、冒頭のイギリスだけで、オーストラリアではほとんどない。それぞれが勝手にお互いを思いあった故の悲劇のようで、あくまでツァラ・レアンダーの物語とヴィリー・ビルケルの物語が交差する質のドラマとは違うのでは、と思ったのだ。

きっと、そう感じたのは、オーストラリアの刑務所にツァラ・レアンダーが居ると知った時のヴィリー・ビルケルの表情を大きなスクリーンで見てしまったからだろう。もしかしたら、昔、VHSで見たときは「まさか・・・」という急展開に驚く顔に見えたが、スクリーンでは「そんなバカな・・・」という予期せぬ事実に驚愕する心情を受けとってしまった。何とか彼女を助ける術がないか探す時の彼は、彼女への愛情ではなく自らの罪の意識を軽くする為の行動に見え、そう感じてしまったら、自殺という結末にも納得してしまった。彼はマジメな男だった、というだけのこと。

なかなか新鮮な印象になった本作。それでも特異なメロドラマだと思うのは、ツァラ・レアンダーの結婚に彼女自身の愛があるかどうかに依るのだが、これまでのヴィリー・ビルケルの自殺の謎が、わたしの中で解けてしまったので、この物語がよりへんてこなものに思えてしまった。なかなかに残酷。ダグラス・サークのキャリア後期、ユニバーサル時代の作品群はとんでもない物語ばっかりだと思っていたが、なんの、ウーファー時代のデトレフ・ジールクの頃からなんら変わっていなかった。おもしろい。