ニューヨークを離れミズーリで「ザ・バー」という名のバーを経営する男と、その失踪した妻をめぐる物語。登場人物たちは、すべてある役割を典型的に演じ続け、その外側を見ようとはしない。刑事は刑事らしく、女性ニュースキャスターはそれらしく、野次馬たちは野次馬らしく、ころりと態度を変えて平気だ。これは〈らしさ〉の映画だと途中で気づき、やや白けた私の関心は、時どき姿を見せる主人公の飼いネコに向かった。ネコは演技をしないでもネコで、人間の外側で幸せなのかも。