若き日のシシー・スペイセクに会えるぞ

⚫︎シシー・スペイセク、若いねえ。あの可愛らしい声は、「キャリー」の女の子とはとても思えない。
⚪︎いやいや、この映画の見どころはそこじゃないって。伝説の監督テレンス・マリックの幻の第一作が日本でようやく公開されたことだって。
⚫︎いや、でも、この映画には伝説らしい雰囲気はあんまりないよ。
⚪︎そんなことはない。のちのちテレンス・マリックの代名詞となる映像の抒情性はちゃんと垣間見える。
⚫︎だけどテレンス・マリックの抒情性だって、「天国の日々」「シン・レッド・ライン」くらいまでで、あとは抒情性というより、どんどんわけわからない方向へ行っちゃったって印象があるんだけど。
⚪︎まあ、そうかもしれないね。でも、そういう意味では、この映画は第一作だけに、一番物語がわかりやすい。
⚫︎うん、たしかに。「俺たちに明日はない」に代表される、男女の犯罪者の逃避行ものの映画。でも、シシー・スペイセクが若すぎて「俺たちに明日はない」のフェイ・ダナウェイとかあるいは「ボウイ＆キーチ」のシェリー・デュヴァルのようなアンニュイな感じが出せないから、映画に奥行が出ない。もう少し年をとってからのシシー・スペイセクであれば、十分に出せたと思うけどね。
⚪︎じゃあ、相手役のマーチン・シーンは？
ジェームス・ディーンを気取ったりして。
⚫︎これまた若くて、平気で殺人を犯すような屈折した人格を表現しきれたとは言い切れない。
⚪︎そこを指導するのが監督なんじゃないの？
⚫︎監督自体、若かったときの作品だからね。多くを望んではいけないのかもしれないね。
⚪︎そうだよ。「俺たちに明日はない」みたいな映画を持ち出されても困っちゃうよ。あ、ここはテレンス・マリックらしいな、とか若いときのマーチン・シーンってこんな感じだったのね、とか思えれば十分なんだよ。
⚫︎だから、そういう意味では、ちょっと腐したりしたけど、若いころのシシー・スペイセクを観れたのが一番の見どころだったよ。
⚪︎まあ、人によって見どころは様々ってことだね。