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若親分あばれ飛車
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シリーズ第五作目、「若親分あばれ飛車」であります。監督はヹテラン田中重雄、脚本は高岩肇、音楽は北村和夫......俳優の北村和夫さんは存じてゐますが、音楽家では存じ上げませんね。カラー作品、シネマスコープ、83分。 南条組の二代目・武(市川雷蔵)は久し振りに郷里の大浜市に帰つて来ました。大浜市では数年前に海軍鎮守府が設置され、急激に発展を遂げた上に、今また新築港の建設が決定し、市内は喜びに沸いてゐると云ふ事です。 南条組は既に解散し嘗ての仲間は皆堅気になつてゐます。代貸だつた猪之助(見明凡太郎)は武の帰還を喜び、南条組の再興を期待しますが、武はせつかく堅気になつた皆を再びヤクザの道に戻したくないため、断るのです。 サテ大浜市では北門組が幅を利かせ、傍若無人な振舞ひをしてゐます。しかも海軍時代の親友・竹村(戸田皓久)の情報によると、北門組は海軍の納入を一手に請負ひ、その裏には黒い繋がりがあると云ふ。証拠を掴む為の調査に、武にも協力を願ふ竹村らですが、武は断ります。同じく海軍仲間の井川(藤巻潤)は武を罵倒するのでした。 折しも猪之助の長男で市の土木課に勤める五郎(青山良彦)は、 北門組の工事入札の不正を発見します。それを知つた北門組のチンピラ共に襲はれる五郎ですが、通りかかつた武に救はれます。此処に至り、武は遂に南条組を復活させる事を決意し、それを料亭「千花」にゐた北門組親分の辰造(二本柳寛)に宣言します。 辰造は武を手強い相手と見て、早速消さうと集団で彼を襲ひます。流石に素手の武は劣勢に立ちますが、「千花」の養女・鶴代(瑳峨三智子)が機転を利かせて助けるのです。ところが鶴代は武の名を聞いて顔色を変へます。「南条武」は、鶴代の父の仇だつたのです...... 若親分が故郷の「大浜市」(架空の市)に戻つて来ます。その足で大陸・大連に渡る予定でした。誰も知らない土地で新たな人生を切り拓かんと考へたのです。しかし故郷の腐敗ぶりがそれを押し留めた形となりました。 今回はヒロインに瑳峨三智子を迎へ、仄かな慕情を抱いた男性(雷蔵)が実は父親の仇と知り、懊悩する役を好演してゐます。本作が雷蔵との最後の共演となりました(多分)。 元南条組の老侠客に見明凡太郎、その息子でヤクザを憎むのが青山良彦。海軍関係ではお馴染み戸田皓久(クレジットでは「戸田浩久」となつてゐて、誤記と思はれます)や北原義郎に加へ、藤巻潤が融通の利かぬ石頭を演じ、見え透いた美人局に引掛かるなど、ドヂを踏みます。雷蔵に助けられ、最後は反省し、感謝するのでした。 ワルの頭領は北門組の二本柳寛。ラストのドンパチでは自らドスを握ります。この二本柳と繋つてゐたのが、清廉な政治家と信頼されてゐた田所(龍岡晋)で、更に海軍の西原少将(北龍二)とも結託、政・財・軍のワルのトライアングルを形成してゐました。勿論我らが南条武が許す筈ありません。若親分シリーズのルーチンも固まり、安心して雷蔵の活躍を愉しめる一篇と申せませう。
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