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鑑賞日 2025/04/06  登録日 2025/04/06  評点 70点 

鑑賞方法 その他/知人所有DVD 
3D/字幕 -/字幕
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罪深き命令に従わぬ兵士は素晴らしい

戦争には略奪がつきものだったりするが、この映画の話はナチス占領下のフランスでドイツ将校がフランスの老人とその姪が住むフランスの地方の一軒家に滞在する話である。
緊張と抵抗を沈黙の態度で接するフランス人に対し、フランスへの憧れと尊敬を一人語りし続けるドイツ人。お互いの微妙な胸の内を、僅かな動きやしぐさで読み解いていく非常に静かで緊張感のある映像だ。特に印象的なのは、老人の将校を見る目である。強く鋭い目線は激しい抵抗の意思以外の何かをも感じさせられる。それは老人が将校に抱く不思議な共感めいたものかもしれない。「罪深き命令に従わぬ兵士は素晴らしい」現実の現状として敵味方決して交わることができない壁があるが、将校の内に秘める葛藤を見た老人の思いが、このはなむけの言葉と言うべき文に表れているように思う。
製作の方はどうだったかといえば、メルビィル監督は原作者とレジスタンス活動家による検閲を受けながら、かなり不自由な条件下で作成されたらしい。フランスへの愛国心を刺激するような政治色を色濃く含まざるを得なかった部分もあるかもしれない。
だが、この作品がただの愛国と反ナチのプロパガンダ映画で終わらなかったのは、触れ合うことを許されない精神にお互いが触れた微かな作用が美しく描き出せた作品だからだと思う。