故郷という揺籠

これを劇場で初めて観たのは、田舎から東京の大学に進学した初めての夏休みだった。楽曲の著作権の関係でまだビデオにもなってなかった作品がかかるというので、吉祥寺バウスシアターまで観に行った。田舎の17歳にとって都市の大学に行くということは、故郷の友人やら恋人やらを捨てて行くことなのは、映画と同じ。しかし、その時はまたすぐ逢えると思って上京したのだった。今回、あの時から30年近く経って、一度も会っていない友人が沢山いることに深い感慨を持った。そんな事になろうとは初めて観た時代には思いもよらなかった。映画館を出て、30年が一瞬で過ぎてしまったような気がした。奇しくもそれこそが、このアメリカングラフィティという映画の芯なのではないだろうか。