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ゴジラ対ヘドラ
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ゴジラとヘドラが戦う.ゴジラもコメディアンのようにジェスチャーや人間的な形態模写で何事かをヘドラに伝えようとしている.ゴジラ(彼女としてみる)は唸り声をあげているだけで,コミュニケーションを取ることができないからである.白兵戦,あるいは肉弾戦というようなもみ合いが彼女とヘドラ(こちらも彼女としてみる)との間で交わされる.このキャットファイトは泥仕合のようでもあり,時に光線のような飛び道具が発射されるが,それも大した効果はないようである. この二人の彼女の戦いの間に,不具になったインテリな男が現れている.矢野(山内明)というこの研究者には,ちょっとだけやんちゃであるものの,暗い顔もしている少年,研(川瀬裕之)の父でもある.二人は磯に調査に訪れて,ヘドラに遭遇し,被害に遭っている.矢野は顔面の右半分がヘドラにやられて爛れてしまい,そのうち包帯を巻いて寝込んでしまう.しかし,頭はまだまだ働くようで,対ヘドラ兵器の計画を練っている.その歳も車のトランクに布団にもぐって移動しており,体調は戻らない.つまり,口だけの人間として,直接的な暴力は国家的な組織に委ねている.ゴジラは彼の代わりに,人間の側に立ち,その先頭に立って,ヘドラの攻撃を受けながら,自らも攻撃しているように見える.もちろん人的な被害は出ているものの,その悲惨なパニックも滑稽な集団劇のように演じられている. 滑稽さや奇天烈さは,ゴーゴーなダンスや世代の描かれ方に極まり,それがヘドラと同期しているように描かれているのも愉しい.すなわちミキ(麻理圭子)や行夫(柴本俊夫)のカップルの描かれ方で,彼女と彼は,若く狂っているようにも見える.それはヘドラ出現のパニックからの逃避にも見え,崇高なヘドラを祭祀で迎えようにしているようにも見える. ヘドラは,形態を変え,空も飛ぶ.彼女に合わせてゴジラも変に飛ぶ.彼女らの運動の同調は,この世界に変調をきたすような効果をもたらしたかにも見える.夜なのだろうか,スモッグのせいなのだろうか,彼女らの泥仕合の背景が薄暗いのも気にかかる.この曇りは,世代の先行きの曇りでもあり,世界に立ち込める暗雲という不吉な未来を象徴もしている.
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