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ライオン・キング:ムファサ
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乾燥した不毛な土地で両親と共に、緑の楽園「ミレーレ」を目指していた幼き日のムファサ。 シンバ同様に怖いもの知らずのやんちゃ者だったが、ある日彼は洪水によって流され、両親とはぐれてしまう。 流れ着いた彼は王族の息子タカに助けられる。 が、血の繋がりを何よりも大事にする王オバシは、ムファサを余所者として受け入れようとしない。 王妃のエシェは孤独なムファサを受け入れ、狩りの手ほどきをするが、やがて彼女はムファサの隠れた才能を見出すことになる。 そんな折、オバシの縄張りに二頭のはぐれ者のライオンが侵入する。 勇敢なムファサはエシェを助けるために闘い、見事に返り討ちにする。 一方、王の血を引くタカは勇気を出せずに逃げ出してしまっていた。 やがて息子をムファサに殺されたことを知ったはぐれ者の王キロスは、復讐のために再度侵略を開始する。 血を繋ぐためにオバシはタカを逃がし、ムファサに彼のお供をするように言いつける。 追手から逃れるうちに、二人は王族の娘サラビと家臣のザズー、シャーマンのラフィキと出会い、幻の地ミレーレを目指すことになる。 どうしても後からこじつけた感が否めない設定ではあるものの、シンプルに冒険ものとして楽しめる作品ではあった。 実はムファサは正統な王の血筋ではなかったという設定は驚きだ。 オリジナルは王族の血が代々受け継がれていく物語でもあったために、それを否定するような展開ともいえる。 が、大事なのは何者かであるよりも、何を成すかである。 生まれでその者の器が決まるわけではないのだ。 またこの設定により、後にスカーとなるタカがどうしてひねくれてしまったのかが説得力を持って感じられるようになった。 彼は二度も闘いの場から逃げ出してしまう。 王族の血を引いているだけに、ほんの少しの勇気を持てないことが、どれほど彼に劣等感を抱かせたことか。 彼は王としての器でも、またオスとしての魅力でもムファサには敵わない。 ムファサを救ったのは自分なのに。 やがて彼は嫉妬のあまり、サラビの愛を受けたムファサを貶めようとする。 彼の心の痛みは分かるものの、彼の行動に賛同することは出来ない。 この物語には多くのはぐれ者が登場するが、すべてのはぐれ者が同じ道を選ぶわけではない。 ラフィキのように己の運命を受け入れ、前へ進み続ける者もいれば、キロスのように自分を疎外した者たちへの復讐心を燃やす者もいる。 どんな過酷な環境だろうと、人は自分の歩む道を選択することが出来る。 この映画を観て、より一層スカーの心の弱さと卑劣さに嫌悪感を抱くようになった。 スカーが惨めになったのは、他でもない、彼自身のせいなのだ。 印象的だったのがタカが二度、ムファサのピンチを救うシーンだ。 ムファサの前脚に爪を立てる仕草。 それは後にヌーが暴走する崖下に、スカーがムファサを突き落とす画と重なることになる。 とても練られたストーリーではあるものの、個人的にはやはりアニメーションのシンプルな画が好きだ。
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