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ビッグ・アイズ
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夫のDVから逃れるために、マーガレットが娘のジェーンを連れて別居するシーンから物語は始まる。 この時点でマーガレットは絵の才能はあるが、男を見る目がなく、世渡りも苦手であることが窺える。 とはいえ、まだ女性が声を上げることが難しかった1950年代のアメリカ。 彼女が賢く生きるための選択肢は少なかったといえる。 マーガレットは露店で似顔絵を描きながら生計を立てていたが、娘との生活のために平気で絵を安売りしてしまう。 そんな彼女の姿を見兼ねて声をかけたのが、同じく絵を生業にしているウォルターだった。 やがてマーガレットは彼に惹かれるようになる。 そんな折に、裁判所からジェーンの養育権に関する通達が届く。 生活力の乏しいマーガレットは、このままだとジェーンを夫に引き渡さなければならなくなる。 するとウォルターは彼女を助けるためにプロポーズをする。 こうしてマーガレットはウォルター、ジェーンと共に新たな人生をスタートさせることになる。 しかし、恩人だと思っていたウォルターは、次第に醜い本性を表すことになる。 これは洗脳と呪縛を描いた作品だと感じた。 マーガレットは才能ある画家だが、男の力がなければ生きていけないと思い込まされてしまっている。 それは時代の影響もあるのだろう。 いくら脅されているとはいえ、ウォルター名義で大きな目の子供の絵を描き続けるマーガレットの姿はやはり尋常ではない。 第三者が見れば、何故マーガレットがウォルターに従い続けているのか不思議でならない。 しかし、それが洗脳の怖さなのだと思った。 そしてウォルターもまた呪縛に取り憑かれてしまっている。 彼は画家を志していたが、己の才能のなさに挫折してしまった。 それでも名声を手にしたいという欲求には逆らえない。 彼は嘘を重ねるうちに、その嘘を正当化する術を身に着けてしまった。 彼は自分の作品(彼が作者ではないのだが)が批判された途端に、人が変わったように凶暴化する。 彼が手にした名声はとても脆く、簡単に壊れてしまうものだ。 それに気づきながらも、彼は後戻りすることが出来ない。 とても醜悪だが、愚かで哀しい男だ。 正直、マーガレットが立ち上がるまでの展開が長く、忍耐を強いられる部分が多かった。 裁判のシーンも、その場で絵を描かせればどちらが本物なのか一目瞭然であり、無駄な時間が多かったように感じた。 最後に勝ち誇ったような表情のマーガレットを観て、ようやく胸がすく思いがした。 それでもウォルターは自分が作者であることを主張し続け、無一文で亡くなった事実を知り、複雑な思いを抱いた。 物語の中では悪役に徹しているが、皮肉にもウォルターはマーガレットの作品を世に認めさせた功績のひとつは担っていたと思う。 もちろん100%自分の利益のためなのだが。 改めてどんな災難が起こっても、人生は最終的にどう転ぶかは分からないのだと考えさせられた。
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