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雨に唄えば
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久しぶりに、午前10時の映画祭で再見。 30年以上前、学生の頃に銀座文化劇場で鑑賞して以来である。 私は若い頃はミュージカル映画があまり好きではなかったのだが、これは初見の時も大変面白いと感じさせる作品だった。 本作はサイレント映画からトーキーに移行する時期のハリウッドを舞台にしている。 ハリウッドのミュージカル映画はどうしても能天気なラブロマンスが絡んでくる印象だが、本作は映画創世記当時の、いかにも「あるある」なエピソードをコミカルに散りばめて描いていることもあり、ただのミュージカルとしてだけでなく、映画としても大変面白く仕上げている。 それにこの映画が素晴らしいのは、肝心の歌も踊りも半端じゃないほど見事な出来を示している点にある。 ジーン・ケリーが雨の中で「雨に唄えば」を歌い踊るシーンは、以前観た時も圧倒されたのだが、やはり改めて見ても素晴らしい。 このシーンは本当に我を忘れてスクリーンに釘付けになる。圧巻である。「巴里のアメリカ人」のクライマックスシーン以上の出来ではないかとさえ思う。 他にも素晴らしいシーンは多々あるが、とりわけ「グッドモーニング」のシーンが最高であった。 ジーン・ケリー、ドナルド・オコナー、デビー・レイノルズの3人の息のあった動きの素晴らしさ。 何度リテイクしたのだろうと思うほど、出来上がったシーンの見事な完成度。 本作のミュージカルシーンは、多くのシーンが1カットで撮ったかのように見える演出を施している。 実際にはカット割りはされてはいるのだが、かなりの長回しをしていることは間違いないので、撮影時には相当な撮り直しがあっただろうと想像する。 しかし、出来上がったシーンからは、そんな苦労は微塵も感じられない。 3人とも終始笑顔で、にこやかに軽やかに歌い踊っている。 ここまで来ると奇跡的な感じさえするほどである。 ジーン・ケリーの歌とダンスは最高だが、ドナルド・オコナーのパフォーマンスはそれ以上である。この人の運動能力はかなりすごい。 なおジーン・ケリーが本作で歌う「雨に唄えば」が、本作のオリジナルナンバーでない(すでに1920年代に発表されていた既成曲である)ことは有名である。 だがこの曲の作詞をアーサー・フリードが手がけていたことは、今回初めて知った。 また本作で声を吹き替えられる大女優リナ役を演じたジーン・ヘイゲンは、本作の演技でアカデミー助演女優賞にノミネートされているが、本編でキャシー(デビー・レイノルズ)が吹き替えたことになっている劇中映画の声は、ヘイゲン自身の声だそうである。 このようなエピソードを知ると、本作がより一層奥深い作品に感じられてくる。 本作は、かつてハリウッドが一時代を築いたミュージカル映画の歴史の中でも、ストーリーの面白さに加え、歌とダンスでも最高のパフォーマンスを見せてくれる、大変見事な傑作だと思う。
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