リー・マーヴィン、儲けもの

　なんか記憶の片隅にジェーン・フォンダが出た西部劇ってある。ひょっとしたら遙か昔にテレビで放映したものを観ていたかもしれない。
　監督のエリオット・シルヴァースタインと言う人、聞いたことがないので調べたらこの映画が初監督で、その後たいした映画を撮らずにフェードアウトしていった様だ。本作の前はテレビででも活躍していたのであろうか、そんなに下手くそでは無いが、かといって上手いと言うわけでも無い。確かに新人監督らしい冒険はあるが、新人監督らしい荒っぽさ、つたなさも無い。
　ジェーン・フォンダが西部劇なんて珍しい。これ1本しかないのではと思って調べたら、デビューしたての頃に1本出ているのね。大体、彼女は女闘士として活躍していたから、普通の娯楽映画に出ているのは珍しい。でも、この映画も女アウトローか。
　この映画、コロンビアの映画だが、コロンビア映画のオープニングロゴの女性がアニメに変わりカウボーイスタイルの女性になる。オープニングロゴが変わるのってたまにあるよね。確か「星の王子 ニューヨークへ行く」だったと思うけど、パラマウントのオープニングロゴからパラマウントの山を越えて山の向こうにある国が出てくる。また、狂言回しとしてナット・キング・コールとスタッビー・ケイ（知らなかったのですが）がバンジョーを弾きながら場面場面を歌って話してくれる。ルイ・アームストロングはよく映画に出てきたけど、ナット・キング・コールが映画に出ているのを観たのはこれが初めて。しかも亡くなる直前とのこと。映画で歌を聴くと、ああ彼だ、と判る。
　リー・マーヴィンが二役で出てくる。一つの役が主人公キャット・バルー（ジェーン・フォンダ）の父親を殺す殺し屋の役。もう一つの役はかつて名うてのガンマンで今は酒浸りのシェリーン。キャット・バルーが父親を護るために50ドルで雇ったが、酒浸りで使い物にならない。いつものリー・マーヴィンなら、悪役かサブの役で出てくるんだけど、今回はコメディタッチのおとぼけ役だ。ラスト近くでこの二人が対決する。彼にとっては儲けものの映画だ。この映画でアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、ベルリン国際映画祭、英国アカデミー賞で主演男優賞を取っているんだから。この映画以外で後にも先にも賞レースでノミネートもされていない。ただ、主演かなと言うと疑問なんだけど。それに賞レースを総ナメするほど優れているかというと、それも疑問。だけど、面白い設定の役であることは間違いない。
　映画の出来は、オープニングロゴが面白いこと、ナット・キング・コールとスタッビー・ケイの狂言回しが面白いところ、リー・マーヴィンのコメディが見られるところ、コメディ映画のところはプラスだが、のめり込むほどでは無い。そうそう、キャット・バルーの父親があっさりと殺されてしまう。コメディタッチだからしょうがないし、その後の展開の為にはこの辺で死なないと、かもしれないが早すぎるかな。