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戦争と一人の女
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戦争と一人の女 「堕落論」の坂口安吾の原作で、戦時中の空襲下において、戦争で心を骨抜きにされた作家の男と幼い頃に廓に売られ不感症になった女の関係を描く2013年の作品。 男は、戦争により絶望感にさいなまれ虚無的になっているのに対し、女はその状況をまるで楽しむかのように、図太く生きていく。二人は戦争が終わるまでSEXをやり続けようかと、まさに刹那的な生活を送る。ただし、女が「私、浮気するよ」というのに対し男は「いいよ」というものの、いざ実際に女が浮気すると、怒りをぶつける。その覚悟のなさは「堕落」以外の何物でもない。このあたりのどうしようもない男女関係を脚本の荒井晴彦は、さすが水を得た魚のように描いている。 女を演じた江口のりこは若く、まるで竹久夢二の美人画のような浮遊感のある美しさである。今では考えられない大胆なSEXシーンもいとわずにこなしている。多少、今の彼女と比べると演技の硬さがみられるところもあるが、彼女自身の存在感さえも示す演技はさすがである。 ストーリーとしては、男女二人の関係と並行して、中国戦線で片腕を失った男が描かれる。彼は戦場での残虐行為から情勢を強姦、殺害することでしか快楽を得られなくなっており、犯行を重ねていく。その中で、戦場での彼らが行ってきた行為が浮かび上がってくる。このあたりの天皇批判に沿った厭戦的な部分、暴行シーンの凄まじい演出はいかにも若松プロ出身の監督(井上淳一)らしい。また、わずか1200万円の低予算の中で、何とか戦時中、戦後の画作りをやろうとする映画屋の心意気を感じる。なんと、元文部官僚で映画評論家の寺脇研氏がこの作品のプロデューサーをしていることも、ニヤリとさせられた。 とにかく戦争により捻じ曲げられ、生きる気力を失ったような男2人に対し、その状況を軽く受け止め、自由に生きていく女。この違いは、場面の違いにかかわらず、永遠のものなのかもしれない。男は全く情けない。それと、我々は生きている限り、「性」からは逃れられないのだ。
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