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愛に乱暴
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愛に乱暴 夫の実家の敷地内に建つ離れで暮らす桃子と夫そして義母との関係を描く作品。確かに、夫真守(小泉孝太郎、髪の毛を下げていて最初誰かわからなかった)の無関心、義母(風吹ジュン)との微妙な齟齬、加えての荒らされたゴミ捨て場、バスで席を譲ろうとした際の母子からの拒否など、日常生活における不穏なことが桃子の周囲で起きている。しかし、それらは世間一般の感覚ではよくあることであり、桃子は気にもとめずに暮らしているように見える。それが、真守から突然に、「彼女が謝りたいと言っている」との告白を受ける。この「何をいっているんだ」的なあっけらかんな真守について、小泉孝太郎のキャスティングが実に生きている。これに対し、桃子はなかったことにするとして、懸命に火消しにまわる。このあたりの江口のりこの演技は絶品である。特に、不倫相手先にスイカを手に訪れるシークエンスは恐怖でしかない。ここからさらに、衝撃の展開がある。実は、桃子もかつて不倫関係で、真守を前夫人から奪った過去があった。故に、日常における様々なストレスを無視して、今の生活を守ろうとする理由がわかってくる。そして、夫に修復の意思が皆無であり(真守が「お前といても楽しくない」というのは、笑うしかないくらいに残酷である)、実家にも戻れる場所はなく、職場復帰も不可能(元上司の無責任さにはあきれる)と四面楚歌になり、桃子はチェーンソーにより、あれだけ守ろうとした家を破壊しようとする。もっとも、桃子によると「本当に狂ってしまいそうだから、狂っているふりをしている」そうで、それが狂っているように僕には思えた。 こうした展開の中で、江口のりこの圧巻の演技を見せてもらっただけで、十分に満足したのだけれど、作品全体の評価としては、どうにも困っている。監督の森ガキ侑大は、意図的に観客の想像を誘因するようなミステリアスな要素(桃子が見ている携帯電話のブログ(誰が書いているのか不明)、探し続ける猫(果たして、実際に存在するのか不明)、床下に埋められた産着)を盛り込んでいるだけれど、それをどのように受け止めていいか、今も迷っている。
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