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下町の太陽
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下町の太陽 1963年の山田洋次のデビュー2作目にあたる作品。倍賞千恵子のヒット曲の映画化の台詞で、いわゆる歌謡映画のジャンルに入る作品であるが、若き日の山田監督の暗中模索ぶりがほほえましい。「流れ星が流れた。だって音がしたもの。ルルル」こんなセリフはなかなか書けるものではない。下町の生活、街向上の様子などにこだわりは見られるものの、ほとんど、後年のような喜劇的要素はみられず、音楽の使い方もこなれていない。ただし、下町の老人たち(左卜全、武智豊子ら)の演出・描写については、後年の山田ワールドへの繋がりが見える。 実は、見る前には、ブルジョワジーから好かれたヒロインが、最後には本当の幸せの姿を見出すという典型的なものを想像していた。しかし、そんな単純な図式的なものではなく、同じような階層の中で、貧困からなんとか抜け出そうともがく人間と、そうしたこだわりを持たない人間との対比というのは意外なものだった。また、戦後とは言え、女性がまだまだ仕事を理由に男に従属させられていた時代(高度成長期)において、女も一人の人間として生きようとするヒロインのキャラクターは、山田洋次にしては、なかなか先進的なものように思える。 それにしても、山田洋次デビュー2作目にして、後に松竹の屋台骨を支える山田・倍賞コンビがあり、そして、倍賞千恵子は、「男はつらいよ:のさくらのようにやんちゃな兄弟(本作では弟)の世話をみてくれる優しい存在であったのだ。
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