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2025/2/12
「キネマ旬報」2月号は発売後SOLD OUTしました。特集は「2025年、映画の旅」(70P超!公開待機作ラインナップ特集)。表紙・巻頭インタビューは、派手に痛快なコンゲームを繰り広げる「劇場版 トリリオンゲーム」主演の目黒蓮。
2025/02/05
「キネマ旬報2月号増刊第98回キネマ旬報ベスト・テン発表号」発売中! 2024年度ベスト・テンの全順位と講評を誌面にてぜひご覧ください。
2024/07/11
1919年(大正8年)7月11日「キネマ旬報」は映画好きの学生たちによって誕生しました。雑誌の100年の歴史を俯瞰した記念ムック「キネマ旬報の100年」発売中です!
2024/02/05
「キネマ旬報2月増刊第97回キネマ旬報ベスト・テン発表号」発売中! 2023年度ベスト・テンの全順位と講評を誌面にてぜひご覧ください。
2024/02/01
2023年 第97回キネマ旬報ベスト・テン第1位の作品と個人賞を「キネマ旬報WEB」にて発表いたしました。
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劇場で年30本程度鑑賞。あとは配信とテレビで観てます。邦画より洋画が多めです。
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動物しか登場せずセリフも一切ない。そんな風変わりな作品であるが、他では味わえない唯一無二の魅力が感じられた。 退廃的な世界観は寓話的なテイストを呼び起こし、宗教や神話的な意味すら深読みさせる物語は、鑑賞者の想像に委ねられる部分がかなり多い。 個人的には、これは神が与えた試練の物語…と解釈した。 旧約聖書に記されている”ノアの方舟”の逸話は有名だが、それと本作はよく似ていると思った。聖書では、神はわずかな人類と動物だけを残して世界を海に沈めてしまった。今作でも大洪水によって世界は一変してしまう。それまでの罪業を洗い流すかのように動物や植物は海に沈められ、わずかに生き残った生物、黒猫やカピバラ、猿、犬、鳥たちはノアの方舟よろしく一艘のボートに乗って荒廃した世界をサバイブしていく。これはほとんど旧約聖書の話そのものという感じがした。 但し、結末は聖書とかなり異なる。ノアの方舟は再生という形で終わりを迎えるが、本作では世界は延々と破壊と再生が繰り返されることが示唆されている。ここが少し残酷な所で、黒猫たちは試練の旅を乗り越えてついに目的地であるゴールへとたどり着くが、結局旅の出発点に戻ってしまうのである。 映画は最後に再び押し寄せる津波の音と共に終わりを迎える。ここまでの黒猫たちの旅の苦労を思うと何ともやるせない気持ちにさせられた。と同時に、この終わりのない試練は、ひょっとすると現代に生きる人類に対する”洗礼”を暗喩しているのかもしれない…などと考えてしまった。 尚、最後に鳥だけは空の中に吸い込まれていったが、これも様々に解釈できよう。神の生贄となったという見方もできるし、鳥は自らの身を挺して黒猫を救ったという善行を成したことから、神に認められて昇天したという見方もできる。 また、人間は一人も登場してこないが、おそらく原罪を抱える人類はすでに滅ぼされてしまっていると考えるのが妥当だろう。 本作にはこうした様々なメタファーが隠されており、かなり幅広く解釈できるように作られている。自分は宗教という観点から紐解いていったが、人によっては自然環境破壊という観点や現代社会を風刺した物語と捉えることも可能だろう。 いずれにせよ、これだけ示唆に富んだ作品は昨今中々お目にかかれない。極めて挑戦的な1本になっていると思った。 一方、単純にアニメーションの表現という点で見てもかなりクオリティの高い作品だと思った。美しい自然描写、生き生きと表現された動物たちの表情は実に素晴らしい。 まず、最初に驚かされたのは、繊細に表現された森の風景である。豊かな色調で表現された植物、透き通るような水の表現は息をのむほどの美しさである。後半に入ると、黒猫たちは荒々しい自然の猛威に晒されることになるが、ここも迫力のある映像で見入ってしまった。 但し、唯一気になったのは水しぶきである。これだけクオリティの高い自然描写にも関わらず、ほとんど水しぶきが上がらないのは不思議に思った。水滴もほとんど垂れないし、このあたりの細かい描写に表現の限界が感じられる。 また、動物たちは自然描写に比べると、解像度が低めでのっぺりとした表現に留められている。これが例えばピクサーのアニメであれば、動物の毛並み1本1本に至るまで繊細に表現されるだろう。そこについては本作は完全に無頓着である。したがって、クオリティという点で言えば確かに物足りなさを覚えるかもしれない。 ただ、これも考え方次第で、敢えてそうしているという風にも捉えられる。生々しさの中にコミック的なデフォルメを加味することで、背景の自然物から浮き上がって見えるようにわざとコントラストを付けているという見方もできる。 更に言えば、アニメーション表現のクオリティ云々という問題はさておき、動物たちの感情はこの映像表現でも十分に伝わってくる。演出としては必要にして十分という感じがした。特に、コロコロと変わる黒猫の目は観てて飽きさせない。こうした動物たちのどこかユーモラスな表情も本作の大きな見所と言えよう。
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