天正十九年光秀の乱で信長の天下は崩壊、秀吉がわが世の春を謳歌するに至った。十年前信長が伊賀を攻略した際、伊賀忍者のほとんどが討死した。伊賀忍者葛篭重蔵は肉親の悉くを殺され信長暗殺に命を賭けていたが、光秀の乱によりその必要も失い山奥に下忍の黒阿弥と共に仏いじりと読経の日を送っていた。こんな重蔵を訪ねた師匠下柘植次郎左衛門は、秀吉を斬ることは伊賀を復興させることであると口説いた。一方次郎左衛門の娘、木さるの許婚者、風間五平は忍者生活に見切りをつけ京の所司代前田玄以の傘下となり石川五衛門と名のったが、前身を甲賀忍者摩利洞玄に見破られて、秀吉を狙う者の撲滅と重蔵を斬ることを命ぜられた。同じ命を受けた忍者の小萩は重蔵にひかれ許されぬ恋に燃えた。十年ぶりに五平と再会した重蔵は、朋輩が敵となっていることを知った。師次郎左衛門はこんな二人を味方にし、豊臣、徳川の二股をかけ有利な方につく魂胆であった。この事を知った重蔵は再度山に戻り、次郎左衛門は単身で摩利洞玄を倒すことを決意したが逆に殺されてしまった。又黒阿弥も洞玄と五平によって非業の死を遂げた。この惨事を知らせに来た小萩は、重蔵が一族の復讐と秀吉暗殺の血気にはやるのを止めて忍者同士のはかない恋も束の間、宿命を負って別れねばならなかった。数日後所司代に忍び入った重蔵は秘術の総てを五体に託し洞玄を倒した。五平の毒を塗った手裏剣に傷ついたが、自分の立場を捨てた小萩の看護で一命を救われた。全快した重蔵は、木さると自分を師と仰ぐ雲太郎を甲賀衆から山へ逃し、秀吉を殺すべく伏見城へ向うが、偉大な秀吉を前にして憎しみもうすらぎ、再び戦乱の世を招く愚かさを悟った。人里離れた山道を重蔵と小萩が一頭の馬に相乗りし、真の人間の幸せを求めて、木さると雲太郎の待つ梟の城へ向うのだった。