朝靄の中、艶やかな衣裳をまとった詩織(牧瀬里穂)が、高層ビルの屋上から舞うように落ちてゆく。日舞の世界で有望視されていた彼女の死に装束は、『娘道成寺』の白拍子の衣装だった。詩織の双子の姉で、ダンスの世界で有望視されている遥香(牧瀬里穂・二役)は、妹・詩織が当代一の女形・村上富太郎(中村福助)に、『娘道成寺』を踊りたいと弟子入りしていたことを知る。そして詩織は、富太郎に唯一認められた女弟子だった。妹の自殺の謎に迫るため、遥香もまた富太郎に近づき、彼の踊る『娘道成寺』に魅了される。そして、間近に迫った公演の主役を親友の今日子(真矢みき)にゆずってまで、富太郎に弟子入りをする。周囲の反対に逆らい、富太郎に詩織と同じように自分にも『娘道成寺』を教えてほしいと懇願する遥香。富太郎は女の情念の表現に異常なまでの執着を見せ、遥香に厳しく稽古をつける。富太郎との稽古の中、遥香はしだいに彼に惹かれていく自分に気づき始める。もしかすると、妹も同じ想いを抱いたのではないか。そして、富太郎も詩織を? しかし、富太郎を敬愛する弟子の秀次(須賀貴匡)にとって、遥香は邪魔者。遥香を遠ざけるために、秀次はニュー女形の花丸(風間トオル)の存在を遥香に教える。花丸はかつて富太郎のライバルだったが、歌舞伎界から大衆演劇に身を投じて、絶大な人気を誇っていた。遥香は花丸から、彼と詩織と富太郎の尋常ならざる関係を告げられる。詩織が富太郎の前で、花丸に抱かれた、と。「女を演じるためには、女を棄てなければいけない」と、富太郎は遥香に言う。詩織の死は、富太郎への愛と踊りへの情熱に引き裂かれてのことだったのか? 富太郎にとって詩織は、そして遥香は、女を知るための道具でしかなかったのだろうか? 深まる謎と富太郎への絶ちがたい愛に苦悩する遥香を、清姫の化身、銀鱗の蛇の幻想が襲う。芸に全てを捧げてきた富太郎には、実は彼だけの秘密があった……。