東京で旅行代理店に勤める咲子(松嶋菜々子)は、故郷の徳島で暮らすただ一人の家族である母、龍子(宮本信子)が入院したという報せを受け、久々に帰郷する。“神田のお龍”と呼ばれる母は、正義感の強いチャキチャキの江戸っ子。周囲からの信頼は厚かったが、経営していた小料理屋を畳む時もケアハウスに入所する時も、相談なく決断してきた母の身勝手さに、咲子は反発を感じていた。まもなく咲子は、担当医から母が末期ガンだと知らされ愕然とする。残された時間はあとわずか。青年医師・寺澤(大沢たかお)との交流を深めながら、母を懸命に看病する咲子。そんなある日、咲子は板前の松山(山田辰夫)から、龍子から預かっているという箱をこっそり手渡される。そこには、死んだと聞かされていた咲子の父らしき男の若き日の写真が入っていた。咲子は母宛に書かれた古い手紙を頼りに、父を探しに東京へ戻る。そして彼女は、小さな病院を開業している父(夏八木勲)と対面する。自分が娘であることは告げられなかったが、父の記憶は鮮やかに蘇った。父は龍子を心から愛していたが、不倫の恋だったため、妻を捨てることができなかったのだ。再び徳島へ戻った咲子は、母の死期が近いことを知る。そして母と父を再会させるために、母を阿波踊りの会場へと連れ出すのだった。