毎月リリースされる未公開、単館系作品の中から、「観たら必ず誰かに教えたくなる」作品を厳選してご紹介。劇場で見逃した作品や隠れた名作が多く並ぶレンタル店だからこそ出会える良作、小規模公開ながらの傑作など、様々な掘り出し映画との出会いを提供します!
<6月リリース作品>
どこか寂しい日常に、訪れた幸せ
『アスファルト』
シンカ/ポニーキャニオンより5月17日リリース
(C)ENVIE DE TEMPETE PRODUCTIONS2013
【STORY】 不器用な男女の出会いと奇跡を描いた群像劇。あるフランス郊外の団地で、車椅子の自称カメラマンと夜勤の看護師、鍵っ子の高校生と落ちぶれた女優、英語が通じない女性とNASA の宇宙飛行士が出会い…。
【オススメCOMMENT】 フランスの古い団地を舞台に描く、不思議なタッチの群像劇。自称カメラマンの男と夜勤の看護師。留守がちな母親と暮らす青年とワケありの元女優。不時着した宇宙飛行士と息子の帰りを待つ女性。なんの接点も感じられない男女が偶然出会うも、互いに求めていたものを埋めていくように、少しずつ心を通わせていく。団地の寂れた空気に染まっていたそれぞれの人生に、光が射し始める情景が心地よいスローテンポで描かれ、鑑賞後はどこか優しい余韻に包まれる。そんな一本。
外野なんて空気やし!
『黒い暴動❤』
クロックワークスより6月2日リリース
(C)2016『黒い暴動❤』フィルムパートナーズ
【STORY】 東京でスタイリストのアシスタントとして働く三十路手前の元ガングロギャル・美羽はうだつのあがらない日々を過ごしていた。そんな中、ギャル友と共にタイムカプセルを掘り起こすため、石川県に帰郷することになる。
【オススメCOMMENT】 退屈な高校時代、彼女はガングロギャルに出会う。外野なんか気にせず我が道を行く黒肌の神から引き継いだのはパラパラ魂! 自分を変えてくれる何かに出会えたあの感動を描いていて、アラサー女子にとっては、“あの頃は真っすぐで楽しかった” が猛烈に刺激される。一心不乱に練習するカッペたちは、金沢のロックフェスまで出演しちゃうから、涙まで出てくる始末。主人公を演じる馬場ふみかの可愛さには始終ときめき、「世界で一番美しい」と彼女を褒め称える変人な間宮君もナイス。
愛すべきゲス警官コンビ
『バッドガイズ!!』
トランスフォーマーより6月2日リリース
(C)Reprisal Films / The British Film Institute 2015
【STORY】 ニューメキシコ州アルバカーキを舞台に、悪徳警官コンビの活躍を描く。街の“ゴミ掃除”(パトロール)に励む警官のテリーとボブは、街の悪人たちが企む100万ドルの強盗計画を嗅ぎ付け、捜査を開始するが…。
【オススメCOMMENT】 ゴミ掃除と称して、時には金で容疑者をゆすったり、情報入手のために容疑者とクスリを楽しんじゃったりとやりたい放題に捜査を繰り広げる警官コンビ、テリーとボブ。かなりの問題児で警官らしくはないけど、犯人は絶対逃さない、愛する人のためなら容赦はしない! そんな純粋な心を持つ憎めない系コンビが100万ドル強盗計画に立ち向かう。相当やり手な裏社会の大物を相手に、彼らは勝てるのか?! 2人の破天荒捜査に最後まで目が離せない!! 怒涛のクライムコメディ。
このセンスにひれ伏したい。
『ロジャー・コーマン デス・レース 2050』
NBC ユニバーサル・エンターテイメントジャパン合同会社より6月7日リリース
Film (C) 2016 Universal Studios. All Rights Reserved.
【STORY】 人口が増加の一途をたどる近未来。そこでは歩行者を轢き飛ばせばポイントになるという凄まじいレースが繰り広げられていた。そんな中、人気レーサーのフランケンシュタインだけは周りのレーサーとどこか違っていて…。
【オススメCOMMENT】 ロジャー・コーマン好きでも、じゃなくても、このぶっ飛んだセンスには抗えない。個性豊かなドライバーたちがイカした車で歩行者をなぎ倒し、人々が無残にも吹っ飛ばされるコメディな様は、もはや完全に良識無視。デス・レースは人々を労働からも生からも解放する自由の極致…万歳。そしてそこに見えてくる「競ってなんぼ!」なアメリカの傲慢精神。何も考えていないようで実は鋭い! 狂いつつもどこか冷静に人間の本質を炙り出すコーマンの悪魔的、または教祖様的美学に跪きたい。
その想いを愛と名づけよう
『ロスト・エモーション』
ツイン/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントより6月7日リリース
(C)2016 Five Sprocket Productions. ALL RIGHTS RESERVED.
【STORY】 感情が人類を破滅へ導くという考えのもと、遺伝子操作により感情のない人間の共同体が形成された近未来。自分の中に感情が芽生えたことに気付き、感情抑制剤を服用するサイラスは、同じ症状を隠すニアに出会い惹かれていく。
【オススメCOMMENT】 感情が病であるとされた近未来。感情が芽生えた男女が、恐れながらも抗うことのできない想いによって求め合う姿を、言葉を極力排し綴る。抑制のとれた静けさの中に、多くの想いがある持続性を保ちながら流れゆき、時に激しく姿を現す。求め合うふたりの奥ゆかしさ、美しさ、官能的なこと、心が震えるような瑞々しさ。それを愛と呼ぶことをまだ知らないふたりは、言葉にできない想いを静かに重ねてゆく。何といういびつな世界の純粋な愛情だろう。やさしく、美しく、やわらかな物語。
初めから目立ちすぎだって…。
『Mr.&Mrs. スパイ』
20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパンより6月21日リリース
(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
【STORY】 郊外の住宅地に妻と子どもたちと共に暮らすジェフの隣に、ジョーンズ夫妻が引っ越してくる。あまりにもゴージャスでパーフェクトな彼らに疑念を抱く中、贈り物のガラス細工に盗聴器が仕掛けられていることを発見する。
【オススメCOMMENT】 隣に越してきた夫婦はスパイかも、と妄想を膨らます妻、呆れながらも巻き込まれる夫、このふたりがいい。それこそ、近くにいそうな小市民的キャラ。さらにひときわ存在感を放つのが、ガル・ガドット。「こんなに美しいのは私のせいじゃない」という彼女の台詞に文句をつけられる人はいないでしょう。『宇宙人ポール』に通じるとはこじつけかもしれないけど、違う世界で生きてきた者が心を通わせる件もあって、コメディだけどちょっと違った味わいのスパイ映画。何だか爽やかな気分になれます。
■前回の誰シネ(5月リリースタイトル)はこちらから