毎月リリースされる未公開、単館系作品の中から、「観たら必ず誰かに教えたくなる」作品を厳選してご紹介。劇場で見逃した作品や隠れた名作が多く並ぶレンタル店だからこそ出会える良作、小規模公開ながらの傑作など、様々な掘り出し映画との出会いを提供します!
<4月リリース作品>
まさに、事実は小説より奇なり
『ワンダー・ウーマンと
マーストン教授の秘密』
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントより3月21日リリース
(C)2017 PMWW LLC. All Rights Reserved
【STORY】 20 年代、大学で心理学を教えていたウィリアムとエリザベスは、女子学生オリーブと出会う。彼女と行動を共にするうちに、それぞれが惹かれあうようになっていくが、3人の関係が明るみになり大学を追放されてしまう。
【オススメCOMMENT】 子供には教えられない『ワンダーウーマン』誕生に隠された実話です。妻がいながら女子学生に惹かれる大学教授に、なんと妻と学生も性的関係に至り、3人は共に暮らす…。今ですら「あら素敵な関係ね」とはならないのだから、当時の周りの反応も仕方ないと思う。そんな関係を続ける中で教授が生み出した「ワンダーウーマン」が、ふたりの女性の影響を色濃く受けた存在になるのも当然だろう。物語の終盤、感情に忠実に従った3人の生き方は、近い将来、普通になるのかもと思え、深く思案。
この人には勝てる気がしない…。
『ギミー・デンジャー』
キングレコードより3月28日リリース
(C) 2016 Low Mind Films Inc.
【STORY】 60 年代後半から70 年代初頭、わずか3 枚のアルバムだけを残し自然消滅したイギー・ポップ率いる伝説のロック・バンド「ザ・ストゥージズ」の狂乱の軌跡を、ジム・ジャームッシュが関係者の証言から明らかにしていく。
【オススメCOMMENT】
イギー・ポップと伝説的バンド、ザ・ストゥージズを、ジャームッシュが撮ったドキュメンタリー。ライブ映像でのイギーが完全に狂っていて圧巻。裸で踊り狂う様は獣のよう。会場は狂乱状態、怒号はもちろん、瓶が飛び交いイギーに直撃するが、「今回は死に損なった。来週またトライしろ」と一蹴。ほかのメンバーはイギーを狂わすための宗教的な儀式とも思えるストイックさで、微動だにせず演奏する姿が超クールで、その静と動の落差はシュール。名立たるロック・バンドに影響を与えたのも納得です。
映像美溢れる残虐な気品
『アニマルズ』
AMGエンタテインメントより4月4日リリース
(C) Factor 30 Films and ScreenWest Inc
【STORY】 オーストラリアの郊外で17歳の少女ヴィッキーが誘拐された。犯人は、女子高生を監禁しては殺人を繰り返す中年カップルのジョンとエヴリン。横暴なジョンがヴィッキーを独占しようとしたことで、エヴリンの怒りに火がつき…。
【オススメCOMMENT】 80年代に実際に起きた連続強姦殺人事件を元にした点で既に背筋が凍るが、冒頭のハイセンスな映像で、従来とは一線を画した監禁ものだと確信できる。“品定めされる”女子高生たちの危険な無防備さも、どことなく芸術的だ。主従関係の愛で成り立つ夫婦の愛や少女の虐げられる様は、痛々しくて病んでいるが、“ふたりの日常”に過ぎないその行為を映す画には不思議と気品がある。彼女たちが本当の意味で解放される最後、どこからともなく聴こえてくるJoy Divisionで傷が癒える。
手に汗握る、緊迫の脱出劇
『メイズ 大脱走』
アット エンタテインメントより4月4日リリース
(C)Mammoth Films / Cyprus Avenue Films / Filmgate Films 2016
【STORY】 英国史上最大の脱獄事件を映画化。IRA幹部のラリーは、北アイルランド紛争を戦った末に、メイズ刑務所に収監される。親友も失い、失意のどん底にいたラリーだったが、仲間たちを脱獄させようと、再び闘志を燃やし始める。
【オススメCOMMENT】 ヨーロッパで最も脱獄が難しいと言われていた“メイズ刑務所”に収監された IRA幹部・ラリー。この男の執念がとにかくすごい。清掃係として、目と耳で得る情報だけを頼りに施設の構造を把握するなど、気が遠くなるような地道さで脱出計画を練っていくその精神力には驚きの連続。そんな中、看守と囚人という関係と言えど、互いに家庭があり人生がある者同士のやりとりにぐっときたりする。脱出劇としてだけでなく、それぞれの正義を信じて闘う男たちの人間ドラマとしても注目したい1作。
家も脳内も脅かされた妻
『マザー!』
NBC ユニバーサル・エンターテイメントジャパン合同会社より
3月23日リリース
(C)2017, 2018 Paramount Pictures.
【STORY】 ある郊外の一軒家に住む夫妻。ある夜、不審な訪問者が現れるが、夫はその男を拒むこともせず招き入れる。それをきっかけに見知らぬ者が次々と訪れ、様々なトラブルが起き始めると、次第に妻は不信感を募らせていく。
【オススメCOMMENT】 ジェニファー・ローレンス扮する清らかな妻が、自分ひとりで修復したという八角形の立派な家の中で、「何かがオカシイ」という出来事に次々と遭遇し、その絶妙な違和感が連鎖していく。J・バルデム演じる夫の「来る者拒まず」「すべては分け与えるべき」というジーザス的な考えもご立派だけど、大勢に侵入されあんなことをされたら…。アロノフスキー監督は極限まで女性を追いつめ、最後に爆発させるのがお好きかと。家も脳内も侵される最恐の疑似体験、どうかこの衝撃に耐えてください。
若者たちの熱き青春爆走劇!
『デメキン』
東映ビデオより4月25日リリース
(C)よしもとクリエイティブ・エージェンシー/ワニブックス/秋田書店・ゆうはじめ (C)2017 映画「デメキン」製作委員会
【STORY】 元暴走族の総長という過去を持つお笑いコンビ、バッドボーイズの佐田正樹の自伝を映画化。いじめられっ子からやがて不良へと成長した正樹は、小学校からの親友・厚成や仲間たちと共に喧嘩に明け暮れる日々を送るが…。
【オススメCOMMENT】 いじめられっこから不良になり、親友と共に暴走族として天下を目指す主人公。芸人・バッドボーイズの佐田正樹の実話を描いた本作だが、こんな高校生たちの喧嘩が本当にあるのかと驚く程、超容赦ない拳のぶつかり合いが繰り広げられる。でもそこには彼らなりの正義や仲間への想い、弱かった自分との葛藤があり、青春時代を全力で生き抜く若者たちの熱いドラマがあった。そして健太郎、山田裕貴らを始めとする、注目若手俳優陣の全身全霊の演技も、物語に負けないくらい熱く、格好良かった。
■前回の誰シネ(3月リリースタイトル)はこちらから