誰かに教えたくなるシネマ

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毎月リリースされる未公開、単館系作品の中から、「観たら必ず誰かに教えたくなる」作品を厳選してご紹介。劇場で見逃した作品や隠れた名作が多く並ぶレンタル店だからこそ出会える良作、小規模公開ながらの傑作など、様々な掘り出し映画との出会いを提供します!

<7月リリース作品>

 

Brain on Fire(原題)とは…

『彼女が目覚めるその日まで』

  KADOKAWAより6月22日リリース

 

(C)2016 ON FIRE PRODUCTIONS INC.

【STORY】                                     ニューヨーク・ポスト紙で働く21歳のスザンナは仕事も恋も順調だったが、ある日突然全身が痙攣する激しい発作を起こしてしまう。医師からは原因不明と見放されるが、恋人や家族と尽力で徐々に人生を取り戻していく。

 【オススメCOMMENT】                                                              

謎の幻聴、めまい、急な発作などに襲われ続けているのに、検査の結果は正常。こんな恐ろしい状況があるだろうか…。精神病と間違われ、誰にも理解してもらえない日々を彼女は耐え抜いた。それは、どれほど恐ろしく、心細かっただろう。そんな彼女自身の頑張りや、毎日病院に通い続けた恋人と家族の支え。そして誰もがお手上げ状態だった中、懸命に彼女と向き合い続けた医師の存在が、奇跡を起こす…!「やっと君を見つけた」と言う最後の医師の一言に、全視聴者が涙するはず。

グルーヴィーなリズムと人魚の恋

『ゆれる人魚』 

 

ハピネットより7月3日リリース

 

(C)2015WFDIF, TELEWIZJA POLSKA S.A, PLATIGE IMAGE

【STORY】                                     人間を捕食する美しい人魚の姉妹が海から上がり、ワルシャワにある80年代風のナイトクラブに辿り着く。雇われた二人はすぐに人気者になるが、姉がベースプレイヤーに恋をしたことから姉妹の関係がすれ違い始める。

【オススメCOMMENT】

ポーランド発の最高に妖しくてグルーヴィーな群像劇。「恋をしたら、人間になりたくなった」という童話「人魚姫」さながらに綴られる人魚の姉妹の姿が快活。懐かしくも絶妙なリズムが突然始まり、皆が踊り出す斬新さには心奪われる。人魚の知られざる生態(人魚の穴はドコにある?)にはドキッとしつつ、人間の足を手に入れる姉(まさかの手術方法)や、人間は“餌” でしかないという人魚の本能が生々しくていい。万人共通の恋に落ちるという本能が、音楽という海の中で活き活きと跳ねる。

禁欲的な閉鎖環境が生んだ悲劇

『クローズド・ガーデン』

 

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントより7月4日リリース

 

(C) 2017 Novitiate Productions LLC. All Rights Reserved.

 

【STORY】                                     神に恋心を抱く17歳のキャスリーン。”キリストの花嫁”であるシスターとなるため修道院に入るが、そこは院長を頂点とする厳しい戒律によって支配されていた。そんな中、教会の刷新を図る第2バチカン公会議の決定が下される。

 

【オススメCOMMENT】                              

愛は犠牲を伴うものと、修道院に入ったばかりの少女たちは突きつけられる。閉ざされた環境の下、禁欲生活を強いられた彼女たちに去来する思いの多くが、罪となり、それを克服することが神の愛を受けるに相応しい修道女だと、罪とそれに対する罰をむしろ必死に求める少女たち。俯瞰すると滑稽にも見え、その姿は痛々しく、愛おしい。そんな彼女たちに降りかかる教会の改革の波によって、その生き方を全否定されたことは悲劇でしかない。しかし、ヒロインの最後の一言に救いを感じた。

 

 

”タイムレスな存在“を追い求める美学

『ドリス・ヴァン・ノッテン
ファブリックと花を愛する男』

 

ニューセレクトより7月4日リリース

 

(C)2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE

 

【STORY】                                     世界のセレブリティやファッションアイコンたちが愛してやまないデザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテン。洋服だけで勝負する彼の創作過程や煌びやかなショーの舞台裏、そして美しきライフスタイルにカメラが迫る。

 

【オススメCOMMENT】

世界的ファッションデザイナーと聞くと、派手な見た目のカリスマ的な人物を想像するが、ドリス・ヴァン・ノッテンは、そんな安易な想像とは正反対の大人しい服装に身を包み、慎ましく穏やかな雰囲気をまとう。しかし、その人柄の奥には、作品に対する熱い想いと貪欲さが隠れていた。「ファッションは半年で飽きられる」と彼は言い、時代や人間と共に成長する”タイムレスな存在”として追求する。彼の生み出すものの美しさはもちろん、彼が求める美学の神髄に、心を奪われずにはいられない。

 

 

女の性(さが)を罰する壮絶ないじめ劇

『ブリムストーン

 

クロックワークス/松竹より7月4日リリース

 

(C)2016 brimstone b.v./ n279 entertainment b.v./ x filme creative pool gmbh/ prime time/ the jokers films/ dragon films

【STORY】                                     ある事情で言葉を発することができないリズは、助産婦として働きながら小さな村で暮らしていた。ある日、彼女の前にひとりの牧師がやって来る。その男はリズに壮絶な過去を甦らせ、彼女の“大罪”を罰しようとする。

【オススメCOMMENT】                             

ダコタ演じる女性の、決して消すことの出来ない過去、その罪と洗礼が4章立てで描かれる強烈な人間いじめ劇だ。「お前の罪を罰する」をモットーにリズをどこまでも追って異常な執着を見せる牧師。リズが愛する男を消し去り、女性に平気で鉄製マスク(口答え禁止)までつけるのに、牧師であるからかそれともイケメンのガイ・ピアースだからか、何故か彼を憎み切れない。生きるために必要だった罪と罰が追いかけっこする中、娼館での娼婦たちの逞しい生き様と色っぽいダコタにも釘付けに。

 

 

彼女のめくるめくワンダーランド

『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY 
リミット・オブ・スリーピング ビューティ』

  

キングレコードより7月18日リリース

 

(C)2017 KingRecords

【STORY】                                     アキは、女優を夢見て上京し、立ち寄ったバーでカイトと出会い10年。女優としては売れず、小さなサーカス団でマジシャンの助手をする日々の彼女は、催眠術にかかる演技をするうちに次第に現実と妄想の境界が崩れていく。

 

 【オススメCOMMENT】   

とにかくヒロインのアキが目まぐるしく、現実と妄想を行ったり来たり。どれが現実か妄想か区別しようがないほど場面が展開する。その流れを確かめようとせずに、身を任せるように観ていくと、最終的には、アキが運命的に出会った、カイトというパートナーの死によって抜けられなくなってしまった夢から、その死を受け入れることで、夢から覚めるまで、を描いていることが分かる。マスクに顔を隠した成田凌と、“運命の男”を演じた、高橋一生の嘘みたいに低くて柔らかな声は必聴です。

 

 

 

■前回の誰シネ(6月リリースタイトル)はこちらから

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