毎月リリースされる未公開、単館系作品の中から、「観たら必ず誰かに教えたくなる」作品を厳選してご紹介。劇場で見逃した作品や隠れた名作が多く並ぶレンタル店だからこそ出会える良作、小規模公開ながらの傑作など、様々な掘り出し映画との出会いを提供します!
<1月リリース作品>
海の被膜、少年の受胎
『エヴォリューション』
アップリンク/TCエンタテインメントより12月22日リリース
(C) LES FILMS DU WORSO ・ NOODLES PRODUCTION ・ VOLCANO FILMS ・ EVO FILMS A.I.E. ・ SCOPE PICTURES ・ LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015
【STORY】 少年と女性しかいない人里離れた島で母親と暮らす10 歳のニコラ。そこでは、少年全員が奇妙な医療行為の対象となっていた。島の様子に違和感を覚えたニコラは、母の後をつけた先で「ある行為」を目撃してしまう。
【オススメCOMMENT】 絵画から抜け出たような女性と少年が海を背景に触れ合う様は美しく、被験者である少年との関係には背徳感が漂う。少年の体に“ 何か”を宿す様はグロテスクだが、淡々かつ静謐に行われるオペシーンには無垢な探究心を感じる。女の正体は一体何だったのか、あの施術で彼女たちの目的は果たされているのか、 あれはふたりの間に生まれた禁忌の恋だったのか、それとも…。目に映る奇妙で美しい光景に様々な疑問が波のように寄せては返すが、最後に少年が目にした明かりで、ようやく安堵する。
ある家族とディズニーアニメの奇跡
『ぼくと魔法の言葉たち』
トランスフォーマーより12月22日リリース
(C)2016 A&E Teievision Networks, LLC. ALL Rights Reserved.
【STORY】 ジャーナリスト、ロン・サスカインドが自閉症の息子と家族の苦闘を捉えたドキュメンタリー。自閉症で突然言葉を失ってしまったオーウェン。しかし、家族の支えとディズニーアニメを通じ、徐々に言葉を取り戻していく。
【オススメCOMMENT】
自閉症で言葉を失ったオーウェンが沈黙の世界を生きてから1年後、大好きなディズニーアニメを観ている最中に突然言葉を発する。それは、『リトル・マーメイド』に出てくる「Just your voice!(声をよこせ!)」という台詞だった…。それからディズニーアニメを通して言葉を取り戻し、大人になったオーウェン。ひとりの生活や初めて経験する恋の痛みなどと向き合いながら、懸命に自立して生きて行こうとする姿に勇気をもらえます。彼の心情を描いたアニメーション映像も素晴らしい!
女の嫉妬が生んだ最恐の復讐劇
『招かれざる隣人』
ミッドシップより1月6日リリース
(C)THE ONES BELOW LIMITED / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2015.
【STORY】 ケイトとジャスティンは、待望の第1子の出産を控えていた。彼らは、アパートの一階に越してきた、同じく第1子を身ごもったテレサたちと交流を深める。しかし彼らをディナーに招いたある晩、テレサに悲劇が起きてしまう。
【オススメCOMMENT】 自分こそが手に入れるべきだったもの。それを身近な人に奪われたら。上階に住むケイトの飼い猫が原因で赤ん坊を失い、出て行った階下の夫婦。上階の夫婦が安堵したのも束の間、ケイトが無事出産を終えると、彼らは戻ってきた…。仕返しされるのではないかと気が気でないケイトと、不穏な行動で彼女を不安に陥れていくテレサ。突如、疑う者と疑われる者の立場が逆転する様には仰天し、妻たちの二面性が見えてくるのはまさにイヤミスの極み。美人妻が企てた復讐の全貌は、正直恐すぎる。
観るべきポイント、揃ってます
『ザ・ボディガード』
AMGエンタテインメントより1月10日リリース
(C)HUNTERS PRAYER LLC/HUNTERS PRAYER PRODUCTION SPAIN AIE 2016
【STORY】 殺し屋ルーカスは、マフィアのボスからエラという少女の殺しを請け負うが、家族を脅しの種に彼女の殺害を迫るボスに逆らい、彼女を助けてしまう。裏切り者として懸賞金を懸けられた彼は、彼女を守るために戦いを開始する。
【オススメCOMMENT】 監督は『ターミネーター3』のジョナサン・モストウ! 主演は『ターミネーター4』のサム・ワーシントン!! 「組織が送り込んだ殺し屋から狙われる少女を、凄腕の暗殺者が自らの命を投げ出し守り抜く」という、『ターミネーター』をどうやっても想起させる設定!!! もうこれだけの材料が揃っているならもう十分、迷わず借りて観るべし! さらに、殺し屋から狙われる少女を“世界で最も美しい顔100人”にも選ばれたことのあるオディア・ラッシュが演じているというオマケもあってなお良しです!
救われない想いに溺れるひと夏
『真夏の体温』
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントより1月10日リリース
(C) 2017 Mae At The Lake, LLC. All Rights Reserved.
【STORY】 ニューイングランドの田舎町に暮らす女子大生のアイリスと、NYの大学に通うキャサリン。4ヵ月前に親友を亡くした事故の記憶に苦しめられているふたりは、心の傷を埋めるため許されない相手との恋に逃げ込んでいく。
【オススメCOMMENT】 親友を失った事故のことで自分を責めながら生きる女子大生ふたり。救いを求めるように禁断の情事に溺れていく姿を、蒸し暑い田舎町の雰囲気と共にゆっくりと描く。相手が既婚者の大学教授や、亡くなった親友の兄というのはかなりスキャンダラスで驚くが、彼女たちの危なっかしさと脆さがとてもリアルで切なくなった。ふたりは強く生きていけるだろうか…。程良くむちむちしたジュノー・テンプルと細くて華奢なジュリア・ガーナーの大胆な演技もエロくて美しい、注目の青春ドラマです。
このタイトルの素晴らしさよ
『地獄愛』
キングレコードより1月17日リリース
(C)Panique / Radar Films / Savage Film / Versus Production / One Eyed – 2014
【STORY】 シングルマザーのグロリアは、出会い系サイトを通じてミシェルという結婚詐欺師と出会う。彼の正体を知った後も思いは冷めず、詐欺にも加担するようになるが、募る嫉妬心が彼女を狂気へと向かわせ殺人を犯してしまう。
【オススメCOMMENT】 愛は盲目とはよくいったもので、傍から見ると男がそんなに魅力的に感じない。絶妙に違う感がある。ただ、「お前、俺のことが好きなんだろう?」という妙な自信が女たちを虜にしていく点に、真実を垣間見る思い。何より、主人公の女の表情が良い。彼女の顔のアップが多用されているが、彼女の表情を通して何が行われ、彼女が何を思うのかが明確に伝わってくる。その表情が何よりもドラマティックに物語を奏でるが、そこに映し出される情景は、まさに地獄。余白のある終わらせ方が後を引いた。
■前回の誰シネ(12月リリースタイトル)はこちらから