誰かに教えたくなるシネマ

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毎月リリースされる未公開、単館系作品の中から、「観たら必ず誰かに教えたくなる」作品を厳選してご紹介。劇場で見逃した作品や隠れた名作が多く並ぶレンタル店だからこそ出会える良作、小規模公開ながらの傑作など、様々な掘り出し映画との出会いを提供します!

<2月リリース作品>

 

涙なしでは観られない、奇跡の実話

『きっと、いい日が待っている』

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  彩プロ/シネマファストより2月2日リリース

 

(C)2016 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa International Sweden AB.

【STORY】                                     1967 年、コペンハーゲン。労働者階級家庭の兄弟・エリックとエルマーは、職員がしつけと称して体罰を与えている養護施設に預けられる。そしてある日、兄と共に逃げ出すことを考えたエルマーはある行動に出る…。

 【オススメCOMMENT】                                                                  ある養護施設に預けられたエリックとエルマーの兄弟。そこではしつけと称して教師による不当な暴力が日々行われていて、本当にこんな恐ろしい施設があったのかと想像しただけで寒気がした。子供たちが自分を押し殺して従うしかなかった状況で、抜け出すことを諦めなかったふたり。そして絶望的な日々のある日、兄を救うために弟エルマーがある行動をとる…。全ての現実を受け止め、生きるために覚悟を背負って立ち向かった小さな背中は逞しく、彼の起こした奇跡に涙が止まらなかった。


 

心の扉を開けたのは、恋だった。

『さよなら、ぼくのモンスター』 

 

ポニーキャニオンより2月2日リリース

 

(C) 2015 ONTARIO INC. CLOSET MONSTER INC. ALL RIGHTS RESERVED.

【STORY】                                     特殊メイクアップアーティストを目指す高校生のオスカーは、幼い頃に目撃した殺人事件のトラウマに未だに悩まされていた。ある日オスカーのバイト先にワイルダーという青年がやってきて、彼に心を惹かれていくが…。

【オススメCOMMENT】

隠れゲイである主人公が、自分の秘めた感情に目覚めていくというLGBTQ 描写は、グザヴィエ・ドラン好きなら無視できない青春群像劇だ。( 監督は若干26歳。) オスカーが飼っているハムスターが語りだしたり、青年の体から突如出現するトラウマのメタファーなどにはっとさせられつつ、全編に響きわたるエレクトロサウンドと幻想的な映像が絡み合う様が心地良い。やり場のない恋心と父親との確執など、暗くて深い闇を乗り越えたオスカーが見る夢は、きっとこれまでとは違うはずだ。
 

 

行き場のない若者の行き先

『ビリー・リンの永遠の一日』

 

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントより2月2日リリース 

 

(C) 2016 Columbia Pictures Industries, Inc., LSC Film Corporation and S8 Billy Lynn, LLC. All Rights Reserved.

 

【STORY】                                     イラク戦争で、仲間を助けるため激しい戦闘を繰り広げたビリー。その行いが英雄と讃えられ、凱旋ツアーが組まれ全米を回る彼と所属部隊。そのハイライトの感謝祭、アメフトのハーフタイムショーで彼は戦場を回想する。

 

【オススメCOMMENT】                               普通の若者を大義の為に英雄として利用する国家。金になると画策する者たちや、アイドルのようにもてはやす人々。自分が誰かの“何か” に勝手に作り変えられていく葛藤を、脇を固める名のある俳優を従え、ほぼ無名のジョー・アルウィンが見事に演じる。姉思いのイマドキの若者を時に激しく、時に繊細に演じる姿は今後の活躍が楽しみ。監督はアン・リー。ラスト12 分は世界初の120 フレーム/秒という迫力の映像。主人公ビリーが慕う軍曹のヴィン・ディーゼルも良い。異色の戦争映画。

 

 

女ふたり、幸せへの逃避行。

『歓びのトスカーナ』

 

 ミッドシップより2月2日リリース

 

COPYRIGHT(C)LOTUS 2015

 

【STORY】                                     イタリア・トスカーナ州の丘の上にある診療施設には、心に問題を抱える女性たちが生活していた。“ 自称・伯爵夫人” のベアトリーチェは、ある日、新参者のドナテッラに声をかけ、ふたりで施設を抜け出してしまう。

 

【オススメCOMMENT】                               施設を抜け出して盗んだ車で走り出す、そんな逃避行が見たいなら絶対オススメ。虚言癖で朝から晩まで高速トークをぶっ放し、ありったけの持ち物でセレブを装うテデスキ嬢には正直圧倒される。ほら吹きも、悪い手癖も止まらないけど、同時に、偶然のバディとなった傷心女性ドナテッラへの思いやりも忘れない。彼女たちは、トスカーナの美しい景色を背に、少しずつ自身の傷と向かい合っていく。その傷はほかの人よりも少し深くて残酷かもしれないけれど、それでも前進する彼女たちに乾杯。

 

 

淡く蘇える、青春の一コマ

『逆光の頃』

 

 

東映ビデオより2月7日リリース

(C)タナカカツキ/講談社・2017 東映ビデオ/マイケルギオン

【STORY】                                     京都で生まれ育った赤田孝豊は17 歳の高校2年生。漠然とした将来への不安を抱える彼が、同級生との別れや喧嘩、幼馴染みの少女との初恋など、思春期ならではの経験を通して成長していく姿を描く青春物語。

【オススメCOMMENT】                               高校2年生の夏。なんとなく将来に不安を感じて、夢を追いかけている同級生がやたら眩しく見える頃。そんな青春時代を過ごす主人公の夏のひとコマが、京都の風情ある風景と共にゆったりと描かれていてとても心地よい。ごく普通の日常で訪れる、心がチクってなる経験や、拳を握りしめたくなる瞬間。好きな女の子とまん丸い満月を眺めたあの時間などなど。すべての出来事が些細だけど特別でちゃんと彼の糧になっているんだなぁって客観的に見つつ、自分の青春時代と重ね合わせてしまいました。

 

 

女性監督だからこその遠慮のなさ

『はらはらなのか。』 

 

キングレコードより2月7日リリース

 

(C)2017「はらはらなのか。」製作委員会

【STORY】                                     自分を生み、亡くなった母に憧れ、同じ道を歩もうとするもオーディションに落ち続ける子役女優の原ナノカ。ある日、母が出演した舞台の再演とキャスト募集のチラシを見つけ、事務所や父に内緒でオーディションに挑むが…。

 

【オススメCOMMENT】                               天才子役でもなく、次のステップでも足踏みをする少女、ナノカ。母を自分が生まれた時に亡くし、父とふたり暮らし。12 歳といえば難しい年頃だろう。しかし、劇中、そんな彼女に「不幸せ」な言い訳をさせない。苦しませるが逃がさない。けっこうな試練が降りかかる。ポップでキュートなファンタジックな世界で、厳しい現実に彼女を対峙させている。そんな主人公を凛として演じるのが、同じ名前の原菜乃華。本作のナノカが女優としてどう歩むかと同様に、今後の彼女も気になるところ。

 

■前回の誰シネ(1月リリースタイトル)はこちらから

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