毎月リリースされる未公開、単館系作品の中から、「観たら必ず誰かに教えたくなる」作品を厳選してご紹介。劇場で見逃した作品や隠れた名作が多く並ぶレンタル店だからこそ出会える良作、小規模公開ながらの傑作など、様々な掘り出し映画との出会いを提供します!
<8月リリース作品>
世界一ポジティブな彼の成功法
『5パーセントの奇跡
~嘘から始まる素敵な人生~』
キノフィルムズ、木下グループ /ポニーキャニオンより7月18日リリース
(C)ZIEGLER FILM GMBH & CO. KG, SEVENPICTURES FILM GMBH, STUDIOCANAL FILM GMBH
【STORY】 先天性の病気で視力の95%を失った青年サリーは、一流ホテルで働く夢を諦められず、目が見えないことを隠してミュンヘンにある5つ星ホテルで見習いを始める。周囲の信頼を勝ち得る中、次第に偽装が崩れ始めていき…。
【オススメCOMMENT】
5%の視力にかけ、五つ星レストランで働くまでを描いたお仕事珍道中。これが実話だというから、“見えないなら丸暗記すればいい”という彼の姿勢には感心する。彼の情熱に心動かされ、“見えるフリ”の芝居に付きあってくれる周囲も温かい。「急ぐなら一人で行け。遠くへ行くなら仲間と行け」という劇中の言葉が示す通り、仲間がいれば不可能は可能になり、見える世界も広くなる。すべての試練を乗り越えた後、愛する人から「私の目がふたつあれば十分よ」と言われた彼は、世界一の幸せ者だ。
13歳、青春のさらに手前のふたり
『星空』
ポリゴンマジック/ ハピネット(ピーエム)より8月2日リリース
(C)HUAYI BROTHERS MEDIA CORPORATION TOMSON INTERNATIONAL ENTERTAINMENT DISTRIBUTION LIMITED FRANKLIN CULTURAL CREATIVITY CAPITAL CO., LTD ATOM CINEMA CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED
【STORY】 中学1年の少女シンメイは、美術商を営む両親が離婚寸前で、唯一の拠りどころであった祖父も亡くなってしまい孤独な日々を送っていた。そんな折、スケッチブックを抱えた転校生の少年と出会い、次第に心を通わせていくが…。
【オススメCOMMENT】
孤独な少女と少年。思春期に入る前の中学1年、13歳。ひとつ年が違えば、思春期によって失われてしまうものがこの作品には凝縮されていて、懐かしく切ない。並んでみると少女の方が少しだけ背の高い姿、声変わり前の少年の声、思いを寄せながらその気持ちがうまく出せない、戸惑いやためらい。そして、自分の想像によって生み出されたものが、現実世界に溢れだしていく情景。大人になってどんなに求めても取り戻すことができない色々が、こんなにもあるんだなと思い知らされます。
不条理の国に迷い込んだロリータ
『黒い箱のアリス』
クロックワークスより8月3日リリース
(C) 2017 ASALLAM FILMS, ALL RIGHTS RESERVED.
【STORY】 父親が起こした事故で、母の命と自らの右腕を失ってしまった少女のアリス。義手をつけ周囲に心を閉ざした彼女は、ある日森の中で巨大な黒い立方体に遭遇する。その中から出てきたのは、彼女自身の筆跡の手紙だった。
【オススメCOMMENT】
森深くに佇む近代的な構造のお家が終始不穏で、アリスの義手からはフェティッシュな雰囲気すら漂わせる。彼女はどこか不機嫌な表情ながら、なぜか常に足は露わという絶妙なロリータルックだ。ママの言葉を喋る犬、森の中で出会う謎の黒い立方体、そして「彼らを信じるな」と彼女自身の字で書かれた手紙。誰が、何を警告しているのか。そして彼らとは一体誰のことなのか。時間軸を交差する予想外の展開に面食らいながらも、美少女たちに圧迫されるダークなサスペンスを心ゆくまで楽しめる。
少女が画面越しに見る現実とは。
『ハッピーエンド』
KADOKAWAより8月3日リリース
(C)2017 LES FILMS DU LOSANGE – X FILME CREATIVE POOL Entertainment GmbH
– WEGA FILM – ARTE FRANCE CINEMA – FRANCE 3 CINEMA – WESTDEUTSCHER
RUNDFUNK – BAYERISCHER RUNDFUNK – ARTE – ORF Tous droits réservés
【STORY】 カレーに住むブルジョワジーのロラン家は、3世帯で洒落た邸宅に暮らすも、家族の関係は冷えきっていた。そんな中、その家の家長で既に仕事を引退していたジョルシュは、長年疎遠になっていた孫娘エヴと再会し…。
【オススメCOMMENT】
裕福だが心はバラバラのロラン一家のもとに少女エヴがやってくる。父として、娘である彼女と心を通わせようとするロラン家の長男トマだが、エヴはそんな父親やこの一家の壊れた関係をどこか冷めたように見つめている。ゆっくり淡々と話は進んでいくが、終盤、祖父ジョルジュとエヴが“ある秘密” を共有したことで突然物語に緊張が走る。その時二人に生まれた絆は、この家族で唯一確かなものだったに違いない。そして最後、エヴは祖父の現実を、画面越しにどう見たのか。
ひとりに背負わされた重すぎる選択
『ヒトラーに屈しなかった国王』
アット エンタテインメントより8月3日リリース
(C)2016 Paradox/Nordisk Film Production/Film Väst/Zentropa Sweden/Copenhagen Film Fund/Newgrange Pictures
【STORY】 1940年、ナチス・ドイツがノルウェーに侵攻し、主要都市が相次いで占領されていた。そして遂に、ドイツ軍から降伏を求められたノルウェー国王ホーコン7 世は、ナチスに従うか抵抗を続けるかの究極の選択を迫られる。
【オススメCOMMENT】
降伏か、抵抗か。こんなにも大きな選択を迫られたとき、自分だったらどちらを選ぶだろう…。降伏して、ナチスに従う運命を国民に背負わせてしまうか、抵抗を続けて尊い命を犠牲にしてしまうか。この重い決断が下されるまでの運命の3日間を、戦う兵士、降伏を申し出るドイツ公使、そして国王であり、ひとりの父、祖父でもあったホーコン7世の3つの視点から描く。それぞれの状況に心が痛むが、ナチスに立ち向かった北欧の小国の勇敢な歴史を捉えた作品として、観ておくべき1作。
島民ほぼみんな逮捕だって!?
『ウイスキーと2人の花嫁』
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントより8月8日リリース
(C) WhiskyGaloreMovieLimited2016
【STORY】 ナチスによるロンドン空爆が激しさを増す、第二次世界大戦中のスコットランドのトディー島。“命の水”であるウイスキーの配給が止まり島民たちが悲嘆する中、ウイスキーを満載したNY行きの貨物船が島の近くで座礁する。
【オススメCOMMENT】
第二次大戦下の英国が舞台の作品といえば『ダンケルク』が記憶に新しいが、こちらはスコットランドの島が舞台で、同じ戦時下を描いたとは思えないほっこりテイスト。島民はロンドンの空爆より、ウイスキーの配給がなくなったことの方が切実な問題で、ヒトラーさえも冗談のネタでしかない。最高におバカな上官に率いられた民兵のおじさんたちはまったくキレに欠け、島民総出で座礁した貨物船から酒を嬉々として奪取し、隠す姿が微笑ましい。実話が基だが、もはやファンタジーです。
■前回の誰シネ(7月リリースタイトル)はこちらから