毎月リリースされる未公開、単館系作品の中から、「観たら必ず誰かに教えたくなる」作品を厳選してご紹介。劇場で見逃した作品や隠れた名作が多く並ぶレンタル店だからこそ出会える良作、小規模公開ながらの傑作など、様々な掘り出し映画との出会いを提供します!
<10月リリース作品>
北欧美少年の暗黒冒険譚
『キング・オブ・トロール
勇者と山の巨神』
インターフィルムより10月3日リリース
(C)Maipo Film AS Subotica Ltd. Sirena Film s.r.o.
【STORY】
19 世紀半ばのノルウェー。貧しい家庭に育つ三人兄弟の末っ子エスペンは、政略結婚から逃れてきた王女・キリステンと出会い惹かれあうが、彼女はトロールに拉致されてしまう。エスペンは兄弟らと共に救出に繰り出すが…。
【オススメCOMMENT】
18歳までに結婚しなければ、王女はトロールにさらわれるという期限つきの伝承は末恐ろしい。王女を見つければ彼女と国の半分をもらえることから、己の欲望真っしぐらの王子と、家を焼いてしまったがためにお金が必要な村の子エスペン兄弟たちが、水中、洞窟の中をかけめぐり、巨大トロールに出会うため、あの手この手で大奮闘。トム・ホランド似のイケメン、エスペンのトロール撃退術は目からウロコ…。夢のような幻覚を見せるあの金色の林檎は、ある意味毒リンゴより罪なアイテムかも。
ただ両親の愛を欲した少年の物語
『グッバイ・クリストファー・ロビン』
20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパンより10月3日リリース
(C) 2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
【STORY】
第一次世界大戦後、PTSDを患った作家のアラン・ミルンは、ひとり息子のクリストファー・ロビンとの田舎での暮らしによって、「クマのプーさん」を生み出す。物語は反響を呼び、話に登場するロビンのファンは増えていくが…。
【オススメCOMMENT】
「クマのプーさん」の誕生を、実話を基に描いた本作。戦争のPTSD で小説を書けずにいると、奥さんが愛想を尽かすまさかの展開。「奥さん、そこは分かれや…」と思うが、まるで被害者のように去っていく自己本位な奥さんを演じるのが、マーゴット・ロビー。はまり過ぎて怖い。ペンをとれば雄弁な父が息子に対しては不器用で、だからふたりにはプーさんが必要だったと納得。作品の登場人物として世界中に知られた息子の苦しみと、それを理解しきれない父親との愛憎が後を引きます。
悩める10代への青春ムービー
『タナー・ホール』
彩プロ/シネマファストより10月3日リリース
(C) 2009, BY Two Prong Lesson, LLC
【STORY】
全寮制の女学校で、仲の良い友人たちと共に学校生活を謳歌していたフェルナンダ。しかしある日、彼女の幼馴染みでトラブルメーカーのヴィクトリアが転校してきたことで、フェルナンダの日常は変化していき…。
【オススメCOMMENT】
幼馴染みに対する苦手意識が抜けない主人公と、密かに抱える寂しさから人を傷つけるような生き方しかできない少女。互いに折り合えないふたりの関係を軸に、不安定な思春期を生きる少女たちの日々が描かれるが、女の子特有の微妙な空気感と若さ故の危なっかしさがリアルで、終始ノスタルジックな気持ちに。初めて経験する痛みや、誰にも言えない悩みに苦しむ姿に心が痛くなるも、互いに寄り添い成長していく姿には心打たれる。ルーニー・マーラとブリー・ラーソンの初々しさも◎!
二匹の哀しき狂犬が奏でる哀歌
『名もなき野良犬の輪舞』
ツインより10月3日リリース
(C) 2017 CJ E&M CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED
【STORY】
誰も信じることなく生きてきたジェホは、刑務所内で野心的な新入りのヒョンスと出会う。ヒョンスがジェホの窮地を救ったことにより、互いに信頼しあうことになったふたりは出所後、手を組んで犯罪組織を乗っ取ろうとする。
【オススメCOMMENT】
ソル・ギョングは相変わらずいい仕事をしている。『ペパーミント・キャンディー』で、「日本の俳優に同じことが可能か」と唖然とさせられて以来、その演技は圧巻。最も惨いことをやってのける恐ろしい男の混沌とした生き様を、説得力抜群に演じる。対する、相手役としてのイム・シワンも遜色ない存在感が眩しい。彼以外のほぼすべてがいかつい男どもなので、その美しさ(こう形容するほかない)が際立つことこの上ない。その一途で懸命な姿は徹頭徹尾、訳もなく観る者の心を打つのだ。
苦難を冒険に変える魔法のモーテル
『フロリダ・プロジェクト
真夏の魔法』
クロックワークスより10月3日リリース
(C) 2017 Florida Project 2016, LLC.
【STORY】
6歳のムーニーと母親のヘイリーは定住する家もなく、 “フロリダ・ディズニー・ワールド”のすぐ近くの安モーテルでその日暮らしを送っている。ムーニーはモーテルで暮らす子供たちと冒険に満ちた日々を過ごしていたが…。
【オススメCOMMENT】
夢の国の陰に住むひもじさを掻き消してしまう“映える” 色使い、パープルに塗られたモーテル、そこの管理人ウィレム・デフォーの頑固で頼れる感が最高。青い髪、全身タトゥーを露わにするヤンママも超絶可愛い。(彼女をインスタで見つけてくれた監督に感謝!)お金を上手にせびり、廃墟に忍び込んではちゃんとやらかしてくるという子供たちの発想こそが何よりのマジック。そんな楽しくも危うい親子が裁かれることになる最後、咄嗟の判断で起こした子供たちの行動には、心のダムが決壊する。
社会と闘う若者達の魂の叫び
『BPM ビート・パー・ミニット』
TCエンタテインメントより10月5日リリース
(C) Céline Nieszawer
【STORY】
エイズ感染者の権利拡大などを目指し、パリを拠点に活動する『アクトアップ パリ』。新たに加わったナタンは活動に参加していく中で、次第に中心メンバーのショーンに惹かれていく。しかし彼はHIVに感染していて…。
【オススメCOMMENT】
90年代初めのパリ。エイズの脅威が広がる中で、彼らは見て見ぬふりをする政府や製薬会社に対し激しく抗議をする。製薬会社に偽の血をばらまいたり、学校に乗り込んで避妊を呼びかけたりなど、憤りを露わにする光景の反対側で映し出される、クラブのシーンが印象深い。ただただ4つ打ちのビートに体を揺らし続けるその姿は、生きている自分の鼓動を感じているかのようだ。病の恐怖だけでなく、「差別」にも苦しめられる若者たち。生きるために闘う、彼らの全身全霊の叫びが聞こえてくる。
■前回の誰シネ(9月リリースタイトル)はこちらから