ホームベースがなければ、ダイヤモンドの輝きもない。
ネタバレ
まずは関東朝日少年院に入所している少年たちが描かれる。窃盗、婦女暴行などの罪を犯した少年たち
は厳しい規律の中で生活する。それぞれの特徴を伝え、あだ名を紹介する。高校野球の経験のある妹尾
新次(永島敏行)は、ポジションのサードと呼ばれた。他に短歌の好きな少年はそのままタンカ。少年院
での生活が丁寧に描かれるが、特に同情的でもなく、批判的でもない。
原作は50ページほどの短編小説。短歌の部分は脚色の寺山修司の趣味だろう。
サードは殺人罪での服役だが、いかにも体育会系の立派な体格で寡黙に過ごす。しかしそんな彼にケンカ
を売る少年もいる。二人はトラブルになり、少年院の対処マニュアル通り、集団ディスカッションに至る。
社会奉仕団体が少年院にやって来ることもある。慰問が主体なので、ともにソフトボールをするのだが、
女性たちのボディラインが少年たちの妄想をたくましくする。
そしてサードの同級生で一緒に美人局をしていたⅡBこと色川明夫が入所となった。
それをきっかけに、サードとⅡBの過去の回想シーンとなる。田舎の高校生は、金を得て都会に出るしか
ない。クラスメートの新聞部(森下愛子)とテンス部は、手っ取り早く金を得るために売春を考える。
しかし二人とも性体験はない。サードとⅡBが、まず相手となって、準備を済ませることになった。
校内で、人目を盗んだ性体験のおかしさと貧しさが70年代の青春として見事に描いた。
準備万端整い、サードは街中で「女子高生と遊びませんか」と客引きを務める。ぎこちない4人組だったが、
美人局は軌道に乗る。しかしやくざ風の男を客として取って、深刻なトラブルになってしまった。ヤクザ者と
サードの殴り合いが始まり、サードは手近の壺でヤクザ者の頭を砕き、死なせてしまった。
原作では刃物で殺してしまう。サードの一人称の小説で、17歳の殺人者という尖った部分があるが、
映画は青春の一時期の迷いが強調されている。やはり無骨なサードの永島敏行、あやうい美少女の
森下愛子と絶妙のキャスティングのせいだろう。二人の健康的な肉体で、70年代の青春の軌跡をフィルム
に落とし込んだ。今から観ると、古くさく感じるのだが、その距離感が映像そのものの特性で、時代に密着
した性風俗は、すぐに古びる。しかしカメラは人物の肉体をそのまま記録する。それが素朴な強さだ。