サード

さーど|A Boy Called Third Base|A Boy Called Third Base

サード

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レビューの数

27

平均評点

74.5(169人)

観たひと

253

観たいひと

19

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1978
公開年月日 1978/3/25
上映時間 103分
製作会社 幻燈社=ATG
配給 ATG
レイティング 一般映画
カラー カラー/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督東陽一 
脚本寺山修司 
原作軒上泊 
企画葛井欣士郎 
製作前田勝弘 
撮影川上皓市 
撮影助手小林達比古 
美術綾部郁郎 
美術助手渡辺正弘 
音楽田中未知 
録音久保田幸雄 
録音助手川嶋一義 
照明上村栄喜 
照明助手磯崎英範 
編集市原啓子 
衣裳東京衣裳企画室 
製作進行石川泰正 
助監督青池憲司 
スチル江西浩一 
協力坂本明郷 
大谷浩之 
星埜恵子 
高城哲 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演永島敏行 サード
吉田次昭 ?B
森下愛子 新聞部
志方亜紀子 テニス部
島倉千代子 おふくろ
内藤武敏 裁判官
峰岸徹 ヤクザ
片桐夕子 赤いセーター
西塚肇 短歌
根本豊 とべちん
池田史比古 アキラ
佐藤俊介 小指
鋤柄泰樹 漢字
水岡彰宏 異論
若松武 緘黙
飯塚真人 宮島
宇土幸一 イレズミ
渋谷茂 田中
尾上一久 吉田
藤本新吾 小山
岡本弘樹 ヨシミ
穂高稔 院長
市原清彦 主任
今村昭信 教官山辺
杉浦賢次 教官広田
清川正廣 教官鈴木
津川泉 教官小野
小林悦子 黄色いスカート
大室温子 サファリルック
秋川ゆか ムーヴィ
関口文子 チビ
角間進 
北原美智子 祭りの少女
品川博 宗教家

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

一人の少年院生が、少年と大人の狭間を彷徨しながらも、成熟に向って全力で走り抜ける姿を描く、軒上泊原作『九月の町』の映画化。脚本は「ボクサー」の寺山修司、監督は「日本妖怪伝 サトリ」の東陽一、撮影は川上皓市がそれぞれ担当。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

関東朝日少年院は三方を沼で囲まれている。鉄格子の中で、少年達は朝早くから点呼、掃除、食事、探索等の日課を黙々とこなす。元高校野球の三塁手として活躍した通称サードもその少年達の一人であった。しかし、数日前、上級生のアキラがサードの優等生ぶりが気に入らずケンカをしかけたため、二人は単独室に入れられていた。ある日、サードの母が面会にやってくる。退院後の暮しをあれこれ心配する母に、サードは相変らず冷淡な態度を示すのだった。少年達が待ちこがれる社会福祉団体SBCがやってくる。三ヵ月に一度やって来るこの日だけが、若い女性に接する事ができるのである。SBCとのソフトボールの試合中、一人の少年が院に送られてくる。サードの仕事仲間で数学IIBだけが取得の、IIBと呼ばれている少年である。ある日、農場で一人の少年が逃走した。誰とも口をきかなかった、緘黙と呼ばれる少年である。その騒ぎにまぎれて院の生活に馴じめないIIBも逃走を図るが、やがて連れ戻される。サードはそんなIIBを殴り倒す。走っていくなら何処までも走れと、無言で語るサードの表情には、確固とした決意が読みとれた。サードの頭の中に在るのは、ここへ護送される途中に垣間見た、祭りの町を走り抜ける夢であった。彼が「九月の町」と名付けたその町は、彼が少年から大人へと成長する時に、彷徨しながら通りすぎる青春であった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1979年2月下旬決算特別号

特別カラー・グラビア:日本映画作品賞 「サード」

1978年4月上旬春の特別号

今号の問題作:サード

1978年3月下旬号

グラビア:サード

1978年3月上旬号

キネ旬試写室:サード

日本映画紹介:サード

1977年12月下旬号

グラビア:「サード」

1972年11月下旬号

DISK 「マクベス」にみるサード・イアー・バンドの思考:

2023/01/25

2023/01/30

75点

レンタル 


ホームベースがなければ、ダイヤモンドの輝きもない。

ネタバレ

まずは関東朝日少年院に入所している少年たちが描かれる。窃盗、婦女暴行などの罪を犯した少年たち
は厳しい規律の中で生活する。それぞれの特徴を伝え、あだ名を紹介する。高校野球の経験のある妹尾
新次(永島敏行)は、ポジションのサードと呼ばれた。他に短歌の好きな少年はそのままタンカ。少年院
での生活が丁寧に描かれるが、特に同情的でもなく、批判的でもない。
原作は50ページほどの短編小説。短歌の部分は脚色の寺山修司の趣味だろう。
サードは殺人罪での服役だが、いかにも体育会系の立派な体格で寡黙に過ごす。しかしそんな彼にケンカ
を売る少年もいる。二人はトラブルになり、少年院の対処マニュアル通り、集団ディスカッションに至る。

社会奉仕団体が少年院にやって来ることもある。慰問が主体なので、ともにソフトボールをするのだが、
女性たちのボディラインが少年たちの妄想をたくましくする。
そしてサードの同級生で一緒に美人局をしていたⅡBこと色川明夫が入所となった。
それをきっかけに、サードとⅡBの過去の回想シーンとなる。田舎の高校生は、金を得て都会に出るしか
ない。クラスメートの新聞部(森下愛子)とテンス部は、手っ取り早く金を得るために売春を考える。
しかし二人とも性体験はない。サードとⅡBが、まず相手となって、準備を済ませることになった。
校内で、人目を盗んだ性体験のおかしさと貧しさが70年代の青春として見事に描いた。

準備万端整い、サードは街中で「女子高生と遊びませんか」と客引きを務める。ぎこちない4人組だったが、
美人局は軌道に乗る。しかしやくざ風の男を客として取って、深刻なトラブルになってしまった。ヤクザ者と
サードの殴り合いが始まり、サードは手近の壺でヤクザ者の頭を砕き、死なせてしまった。
原作では刃物で殺してしまう。サードの一人称の小説で、17歳の殺人者という尖った部分があるが、
映画は青春の一時期の迷いが強調されている。やはり無骨なサードの永島敏行、あやうい美少女の
森下愛子と絶妙のキャスティングのせいだろう。二人の健康的な肉体で、70年代の青春の軌跡をフィルム
に落とし込んだ。今から観ると、古くさく感じるのだが、その距離感が映像そのものの特性で、時代に密着
した性風俗は、すぐに古びる。しかしカメラは人物の肉体をそのまま記録する。それが素朴な強さだ。

2022/02/07

2022/02/09

75点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル/PC 


走り続ける永島敏行

ネタバレ

 昔に観た時に、私のトラウマになった、少年院で、サード(永島敏行)が洗礼を受けたかのように出された、唾入りの食事を、再び観ることになった。でも、今回は、それなりに筋を追って観ることが出来たので、以前のようなトラウマにはならなかった。

 サードと新聞部(森下愛子)らと組んだ売春は、背景も描かれず、そのやり方が、あまりにも安易過ぎる。その為、塀の外での彼らはリアリティが全くなく、ファンタジーのよう。が、サードは少年院の中での方がシャンとしている、ⅡB(吉田次昭)も少年院の中の方が現実味があった。そして、ホームベースを探して走り続けるサードが青春の苦悩と挫折をよくよく出していると思った。

 永島敏行のほとんどのデビュー作のようなものらしいが、抜群に目立っていた。森下愛子も本当に妖艶で可愛いと思ったが、売春が馬鹿過ぎて残念。

 寺山修司が脚本(監督は東陽一)ということで観たんだけれども、一癖ある本に仕上がっていたように思った。

2021/05/15

2021/05/22

10点

選択しない 

刑務所が舞台というせいもあってか、写し方や話の構成が洋画のような作り方だなと思った。

2020/06/18

2020/06/19

90点

選択しない 


サード
と、聞くと、元野球少年だった自分は「4番」を連想する。
パワフルで、ここぞという時のハッスルプレー。そんな奴がサードを守る。
この永島敏行の恵体っぷりと、やらかした罪のそれはまさしく4番の仕事。
とにかく苛立っている。大人にも自分にも親にも仲間にも苛立っている。それはホームベースという本来持ち得る「ゴール」ないし「目標」がないからだ。完全に見失っている。
物語は饐えた臭いのしそうな前半から、青臭く青春の臭いのしそうな後半のグラデーションの見事さ。この順番でなきゃと思わせる。
後処理まで映す細かさとチャイムの音。性表現においてとことんリアル。この年代の女の子が平気で脱いでるのみるとやっぱ面食らう。
顔の表情ではなく乳に滴る汗で表現する感覚の鋭さ。
おならの話を続けるカミカミおじさんとかコミカルなシーンもあったし、ATG 寺山修司 と聞いて敬遠してたけど、こりゃ傑作。
答えを探し続けて走り続けるエンドロールのキレに驚く。
「自由になるとまた倦怠を感じた」

1982年

2020/06/15

100点

選択しない 

出演者の大半が新人か素人で台詞も何となくぎこちない。
田中未知の不安定な旋律が
重苦しいストーリーと妙に調和している。

この街を出て、どこかもっと大きな街へ行こう。
つまらない田舎の高校に通うサード(永島敏行)IIB (吉田次昭)
新聞部(森下愛子)テニス部(志方亜希子)は、つき合っているという
わけではないけれど、何となく気の合う仲間。
4人は、憂鬱な街から脱出するためにお金を稼ぐことにした。
新聞部が大根でも売るように、あっさりと「私たちの身体を売ろう」
と言う。
テニス部も何の屈託もなく「そうよ、身体を売ろうよ。私たちの」
狼狽する男達を巻き込むようにして始まった売春家業。
サードとIIBが客を見つけテニス部、新聞部が相手をする。
商売は軌道に乗ったかと思ったが・・・
新聞部が気に入って取った客が実はヤクザ(峰岸徹)でトラブルに。
暴行を受けたサードは思いもよらず、ヤクザを殴り殺してしまう。

少年院に入ったサードは、何かを求めて走り続ける。
そう、ホームベースを探して走り続けるしかない。自分のペースで。
少年院を出たら真っ先に、護送車の中から見た祭りの街、
9月の街へ行こう。
嫌がらせ、喧嘩、友人の自殺。様々な経験をしながらサードは
9月の街を思い描きながら今日も走り続ける。

最初、深夜のテレビ放送で「サード」を見たとき、確か高校に
入ったばかりの頃か、激しい衝撃を受けて、しばらく残像が離れなかった。
こんな身体の芯にまで衝撃を与える作品があるんだと、映画というものを
自分の中で再確認した。まさに当時の僕にとって、運命的な出会いであった。
すっかり、映画の魅力(サードという作品の魅力)に取り憑かれてしまって
映画監督になろうと上京して大学に(早稲田を志望したのはただそれだけの
理由だった)入ったのが懐かしい思い出。今では、すっかりただの
オヤジサラリーマンとなってしまったけれど、この作品を見るたびに
10代の瑞々しい感覚を思い出してしまう。

売春をする前に、バージンじゃあ嫌だからと、何となくパートナーと
なっていた4人は学校で初めての経験をする。
永嶋敏行と森下愛子の図書館での絡みも印象的であったが、吉田次昭が
行為の前に射精してしまい、志方亜希子が「つまんないな」と呟くシーンに
リアリティーと女の残酷さを知るのだった。しかし、一方では、あのときの
射精に、未熟ながらも可能性そして多くの選択肢ある若さのエネルギーをも
感じたのであった。

ホームベースのないランナーは走り続けるしかない。まだ若く単純な私は
その言葉に純粋に共感を覚え、走り続けるサードとともに自分も自分の
ペースで走り続ける決心をしたのだった。

感化されやすいと言われるかも知れないけれども、私にとって、今の人生を
歩むことになったのもこの作品があったからで、つまり、この作品を
知らなければ田舎から上京しようとも思わなかったわけで、そういった
意味からも「サード」は人生を変えた大切な作品である。

2020/05/04

2020/05/04

80点

購入/ブルーレイ 


ATGの雰囲気たっぷり

ネタバレ

今見るとほんとに当時の空気感を思い出す、貴重な一本。なにより、寺山修司の脚本が素晴らしいのか、その展開が実にリアルで日常ですごい。切り取った演出もすごいけど、なによりあの空気感を抑えた撮影録音照明は素晴らしい。決してメジャーなエンタメにはならないけど、ドキュメンタリーってだからいいんだよねって思わせる、ドラマだ。少年院の空気感も、あらためてブルーレイの高画質で見るとまざまざと蘇り、過去の映画をみているとはとても思えない臨場感。森下愛子はにっかつの映画よりも素敵です。