黒線地帯

くろせんちたい|----|----

黒線地帯

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レビューの数

15

平均評点

67.2(74人)

観たひと

105

観たいひと

7

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1960
公開年月日 1960/1/13
上映時間 80分
製作会社 新東宝
配給 新東宝
レイティング
カラー シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督石井輝男 
脚本石井輝男 
宮川一郎 
企画佐川滉 
製作大蔵貢 
撮影吉田重業 
美術宮沢計次 
音楽渡辺宙明 
録音根岸寿夫 
照明矢口明 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演天知茂 町田広二
細川俊夫 鳥井五郎
三原葉子 麻耶
三ツ矢歌子 美沙子
大友純 橘祐吉
吉田昌代 黒木蘭子
魚住純子 佐野兼子
守山竜次 泰造
鳴門洋二 サブ
宗方祐二 ジョー
瀬戸麗子 大沼麗子
南原洋子 エミー浜口
菊川大二郎 並川
矢代京子 千晶
鮎川浩 ホテルの支配人
城実穂 ホテルの女中時子
小高まさる 写真売り
桂京子 杏子
山村邦子 加代
浅見比呂志 加代子(ゲーボーイ)
坂根正吾 ゲーボーイB
高松政雄 ボート屋の老人
大谷友彦 マネキン屋の親父
水上恵子 シンガポール(女給)
国創典 主任
倉橋宏明 刑事井上
宮浩一 刑事近藤
晴海勇三 刑事鈴木
村山京司 警官
原聖二 食料品店の店員

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

「人形佐七捕物帖 裸姫と謎の熊男」の宮川一郎と「猛吹雪の死闘」の石井輝男の脚本を、石井輝男が監督したもので、秘密売春組織を描いたもの。「静かなり暁の戦場」の吉田重業が撮影した。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

トップ屋の広二は秘密売春組織を追っていた。街頭の女易者の案内で、つれこみ宿へ行くが、そこで眠り薬を飲まされた。目覚めた時、女は首をしめられて死んでいた。ワナだ。町田は女易者とポン引の行方を探った。この“踊り子殺人事件”を新聞が報じ、町田のライバル鳥井も動き始めた。町田は例の旅館の女中を街で見かけ、話をきこうとした時、車が女をはねた。女の髪の中から麻薬が出てきた。また“あの晩の男はサブ”とも言い残した。警察に、事件を知らせる女の電話があった、--町田の急報と同じ頃に。鳥井はテープの声を町田と判別し、彼に目星をつけた。町田は死んだ踊子と親しかったという洗濯屋を探るが、手がかりはなかった。が、街で拾った女の麻薬常用者からサブの居所を知った。コマ劇場のそばのパチンコ屋。町田はサブを追い、マネキン製造所に飛びこみ、麻耶というあばずれ女と知り合う。海軍キャバレーのシンガポールという女給のことを話してくれた。そのキャバレーに鳥井が来ていた。--町田は死んだ女の踊っていた横浜のキャバレーへの途中、美沙子という高校生を拾った。彼女はフランス人形運搬のアルバイトをしていた。町田はマネキンに麻薬が隠されていると悟り、麻耶に自白を迫る。鳥井がかけつけ、町田を犯人とキメつけた。町田は二日の猶予を鳥井にもらった。麻耶はいつか彼にひかれていた。警察はすでに町田を犯人として追っていた。町田は麻耶と二人で追手をのがれるが、途中女がケガをし、看病した。時間は迫った。麻耶は知っていることを町田に全部話した。町田は女易者を見つけ出し、麻薬団のボスが例の横浜のキャバレーを根城にしていることを聞きだした。彼はキャバレーに行った。そこには美沙子が人質になっていた。--町田の活躍で、事件は解決した。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1960年2月下旬号

日本映画批評:黒線地帯

1960年1月下旬号

日本映画紹介:黒線地帯

1960年1月上旬新春特別号

新作グラビア:黒線地帯

2023/01/20

2023/01/21

70点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 


フォアグラよりもこっちは100円以下のコロッケがうまいのさ

冒頭、新宿の町中を逃げ回る女を追い掛ける視線から、主役の天知茂が女の易者に呼び止められる。今ではなんでもない導入部であるが、当時ではつかみはOKみたいな演出である。この頃の映画ならまず登場人物のキャラクターやバックボーンを説明して、どういう話かということを描く。本作品はなぜ女が追われているのか、女を追っているのは誰かは分からない。ひょっとすると眉間にしわを寄せている天知茂が追っているのではないか、と思う。案の定、天知が追っているのだが、冒頭での視線は天知のものではない。天知は売春組織を追う事件記者であり、その宿で睡眠薬の入った酒をのまされ、目覚めたときは横に冒頭で追われていた女が首を絞められ死んでいた。彼を罠にはめたのだ。天知は自分を罠にはめた奴を探す。

女子高校生の役で三ツ矢歌子が演じているが、この時23歳だったのでこれはどうかと思うんだが、彼女はこの映画製作の年に小野田嘉幹監督と結婚したのだった。やっぱり女子高生はまずいんじゃあ・・・。

天知がゲイバーへ行く場面もある。石井輝男監督はゲイを良く出してくるが、これが今では許されないことだ。異形のもの・奇怪なものという描き方をする。あるいは気持ち悪いとギャグにするというか、LGBTがとやかく言われる今ではこれらは差別的となる。「網走番外地」でも囚人のなかにオネエを出演させているが、当時としてはゲイボーイをそんな扱いをしてもクレームはこない。もちろんゲイが声を上げるのは憚れる時代でもあったからだろうし、またこの時代だと一般の人もこれが道徳的にいけないことなんだとは思っていない。昔はおかまと侮辱して笑っていたよなあ。

今と違ってヌードも見せられないし、過剰な残虐場面もダメなのだが、それでも歓楽街のいかがわしさ、妖しさを照明を使って雰囲気を出している石井監督のこのタッチは素晴らしいと思う。不健全娯楽映画の様相がこのシリーズの見どころである。このあやしい魅力が満載の映画を、淀川長治は「とりすました味気のないデラックスのディナー・コースより、この荒っぽい手料理のなんと楽しいことか」と評している。言い得て妙、だと思う。石井輝男監督の映画は一流シェフの高級料理というものでなく、二流の安いけれどおいしい街角の食堂のメシという感じだ。知る人ぞ知る穴場だな。

また淀川は本作の三原葉子を「安っぽいグラマーに扮した三原葉子が出てくると、もうそれだけで面白くなる。ジェルソミーナがグラマーに早変わりした魅力である」と激賞するのだった。「地帯シリーズ」は三原葉子の魅力がひとつの見どころだ。彼女は美人じゃないけど、どこか可愛くて人を惹きつけるところがある。この映画でもエロを担当して天知を翻弄するくせに、無垢なところもあり、それをジェルソミーナに例えるとは、これまたその通りと思ってしまう。こういう気付きがあるところが淀川批評の面白さであり、私は彼の文章に触発されることが大なのである。ちなみにジェルソミーナというのはフェリーニの「道」でジュリエッタ・マシーナが好演したヒロインだ。私はこの三原葉子を観て、ジェルソミーナを連想しなかった。もちろん私ごときが淀川の鑑賞眼と同レベルだとはおこがましいことなので、間違ってもそうは言わない。

また本作の結びに「この映画作者はもっと自信を、もっと本格的にとりくむべし」と愛情のある励まし。こういう言われ方をしたら、石井監督も腹を立てるまい。私も淀川を見習って駄作もやんわりと言いたいのだが、つい怒っちゃって罵倒するから人間が出来ていない。
今駄作と言ったが、本作はそうでないよ、念のためにことわっておく。

2010/09/09

2020/07/06

75点

選択しない 


トップ屋≠豆腐屋

 前作「白線秘密地帯」ではワルだつた天知茂が堂堂主演のサスペンスドラマであります。新東宝得意のドキュメンタリイタッチの逸品。監督は勿論石井輝男、脚本は石井と宮川一郎、撮影は吉田重業、音楽の渡辺宙明は時々喧しい事があります。

 フリーのトップ屋である町田(天知茂)は売春防止法施行以後の「黒線」組織を追つてゐました。背後には暴力団が絡み、売春のみならず麻薬の売買も行はれ、売人(運び屋)には弱い立場の女を利用します。女を薬漬けにしてしまへば、もう意のままであります。ワル共の高笑ひが聞こえてくるやうではありませんか。
 そんな町田ですが、取材中に罠にかかり、眠り薬入りの酒を飲まされ、目が覚めたら横に女の全裸死体があつたのです。ご丁寧にも、彼女の首には町田のネクタイが締められてゐました。このままでは自分が犯人にされてしまふ。自らの手で真犯人を挙げ、疑ひを晴らすしかありません。

 女を紹介したポン引き・サブ(鳴門洋二)の行方を捜しますが、手掛かりはつかめません。サブを追ふ途中に見つけたマネキン屋で麻耶(三原葉子)といふ怪しい女と出会ひ、情報を引き出します。町田と麻耶は次第に魅かれ合ふやうになるのでした。一方町田のライヴァルである鳥井(細川俊夫)は町田の犯行と断定しますが、彼に48時間の猶予を与へます。麻耶は町田の無実を晴らす協力をするやうになるのですが、さうなつた暁には麻耶の犯罪も明るみに出てしまふ事になるのです......

 石井監督らしい、スピード感溢れる活劇となりました。筋立てとしては、尺が短いせいか矢鱈と偶然が多く、少々粗い展開ではあります。しかし演出の勢ひとモノクロームの画面が観客をぐいぐい引張り、「まあそんな事どうでもいいや」みたいな感覚にさせるのが面白い。白黒なのは予算の都合ですが、逆に効果を挙げてゐますね。大映でも後年カラー時代に、「忍びの者」や「陸軍中野学校」などのシリーズであへて白黒で製作してゐます。

 ヴァンプな三原葉子、無垢な三ツ矢歌子(ワルに運び屋として利用される)、素直に敗北を認める細川俊夫、チャライ役が似合ふ鳴門洋二、殺し屋ジョーこと宗方祐二、絶対悪の大友純など、配役も適所。

2019/02/14

2019/02/19

60点

選択しない 


赤線後の黒線

ネタバレ

 新東宝、大蔵貢製作によるサスペンス映画。自分の年代にとっては、この頃の作品群は東映時代劇、日活アクション、松竹ホームドラマ、東宝怪獣、大映は座頭市と大雑把に色分けできるのだけど、新東宝となると丸っきり印象がない。抜け落ちている。僅かな期間、映画界の徒花的存在としてあった会社らしいので当時子供の自分が知る由もない。子供向け映画のスーパージャイアンツにだって自分の年齢では間に合わなかったのだから。 
 だから今見ると逆に新鮮な感じがしてしまう。どちらかと言えば日活アクションが近い色合いかと思うが、こちらはもっと胡散臭さがある。
 女の魅力を醸し出すのにも日活とは違い露骨なのである。中盤から主人公のトップ屋、天知茂に絡んでくる三原葉子のやたらと肌を晒す姿がそれ。彼女は新東宝の誇るセクシー女優とのこと。私は素晴らしいと思う。当時映画会社のトップスターにここまで大胆に肌を晒させ、色気を振りまかせるようなはしたない(?)行為をやらせるのはこの映画会社くらいかもしれない。その役者根性に拍手。
正直ストーリーは詰め込み過ぎもあって破綻している。突っ込みだしたらいろいろありそうだ。サスペンスのエッセンス(謎の犯人を追うハードボイルド、それに絡むお色気などなど)を約80分に凝縮させるのだから綻びも出てくるのは致し方ないが。

2017/06/04

2017/07/10

70点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


脚本のアラなどどこ吹く風

シネマヴェーラ渋谷の石井輝男特集「黒線地帯」は、学生の頃に文芸坐だったか、地帯シリーズのオールナイトで観たあと、10数年前にもシネパトスだったかで観ていますから、話の大筋は覚えていますが、細部の多くは忘れていたところ、変なところは覚えていて、天知茂と三原葉子がなぜか缶詰を買いにゆく場面を記憶していました。
「黒線地帯」は、トップ屋(週刊誌のトップ記事を狙う記者を昔はこう呼んだのです)天知茂が、麻薬密売と通じた売春組織(映画の中で天知はその組織の事を“黒線地帯”と呼びます)を追っているうちに、売人の一人である踊子が殺害された事件の容疑者に仕立て上げられたため、潔白を証明しようと組織に迫るというお話で、ヒッチコックの「三十九夜」あたりをお手本にしたのかも知れません。
殺された踊子の足取りを追って横浜に来た天知茂が、偶然女子高生・三ツ矢歌子を車に乗せてやると、その三ツ矢が通う人形教室が麻薬密売の中継所の役割を果たしていた上、東京で偶然知り合った三原葉子を横浜で見掛け、その三原も麻薬に関与していたというふうに、偶然が次々と積み重ねられるご都合主義そのもののお話ではあります。
横浜で再会した天知茂と三原葉子が缶詰を買いに食料品店に入ると、そこで偶然ラジオから踊子殺しの容疑者が横浜で発見されて逃亡中というニュースが流れるあたりも、ご都合主義の塊だとすら言えますが、脚本のアラなどどこ吹く風で、石井輝男演出は次から次へとエピソードを積み重ね、映画を疾走させてゆくのであり、この描写のスピード感に巻き込まれてしまうと、観客はご都合主義への批判などどこへやら、映画にすっかり乗せられてしまうという仕掛けです。
「黒線地帯」のクライマックス、映画の終盤になって登場した“ジョー”という名前の殺し屋と天知茂が、貨物列車、海の中、ポンポン船の船上と場所を変えながら、殴り合いのアクションを繰り広げ、後の「網走番外地」シリーズに連なる活劇演出のキレを見せますが、ここで流れる渡辺宙明の劇伴もドラムソロであり、石井の打楽器好きが炸裂していました。

2005/11/03

2017/05/21

65点

映画館/東京都/新文芸坐 


色とりどりの線がある

新東宝末期に作られた白線・黒線・黄線・セクシーと続いたラインシリーズの2作目にあたる作品で、映画は余計な前セツは一切なしで美女の顔のアップでスタートします。そこに主人公のトップ屋・町田(天知茂)が登場します。
出来の良い洋物サスペンス映画のようにストーリーは畳み込まれるように展開し、伏線や筋立てにとらわれることなく、主人公にカメラが付き添い、ユーモアやお色気もしっかりと加味したドラマは見せ場の連続で、スクリーンに目が釘付けになります。
天知茂は無論ですが、三原葉子の役どころを上手に引き出し、彼女の2.5枚目的魅力を発掘した石井輝男監督の技量も確かです。

2017/03/31

2017/03/31

65点

テレビ/有料放送/WOWOW 


横浜の景色

冒頭は歌舞伎町のコマ劇場や新宿東急ですが大半は横浜ロケで、赤レンガ倉庫や横浜税関のクイーンの塔などが出てきてちょっと親しみを感じます。

天知茂は「トップ屋」なので、殺人の容疑を受けて逃げてると言いながらスイスイやりたいことをやって真相に近づいていくのが微笑ましい。

顔だけに当てたり、下から煽るように撮った映像に存外に緊迫感があります。

三ツ矢歌子は声を聞いてなんとか判別しましたが高校生にはちょっとトウが立ってました。三原葉子の純情と、敵か味方かよくわからない細川俊夫の存在感が良かったです。