晩春・麥秋・本作と観て来て、急にアップグレードしたように感じました。 原 節子さんも無駄にヘラヘラしていませんし、何より笠 智衆さんの自然な演技が良かったと思います。 晩春は、父離れ出来ない娘(紀子)に嘘を付いてまで結婚をさせた父・周吉と紀子の愛情物語でしたが、麥秋では笠さんと原さんは兄妹と成り、仲良く暮らした三世代が、やがてバラバラに成って行くと言う物語でした。 何故両親が家を出なくてはイケないのかには疑問が残りました。
本作での笠さんは晩春と同じ名・周吉に戻り、戦争から戻らない次男・省二の設定は麥秋から引き継いでいます。 今作の紀子(原 節子)の役処は、その省二を待つ妻と言う設定です。 三作目ともなるとキャストの個性も見えていて、全て当て書きなんだと思います。 前作で親子役を演じていた笠 智衆さんと東山千栄子さんですが、本作では夫婦です。 実年齢で笠さんの方が14歳も年下なもので、良く化けてたなぁと感心しました。 まぁ、モノクロですし、白髪には見えなかったので、恐らく金髪にしていたんでしょうね。
周吉と妻のとみは次女の恭子と尾道に住み、長男・幸一(山村 聡)は開業医、長女・志げ(杉村春子)は美容院の経営を共に都内で行っています。 三男・敬三(大坂志郎)は国鉄マンとして大阪に勤務している様です。 都内に住む長男と長女を頼って東京見物を楽しもうとした周吉夫婦でしたが、仕事優先であまりカマって貰えず、周吉夫婦を一番親身になって尽くしてくれたのが、他人である省二の妻だったと言うお話です。 所帯を持つとその世界が一番大事になると言うのがオチでしょうか。 映画の中の物語と言うより、あまりに日常的な日本の「あるある」集で、海外から見たら驚きが有ったんでしょうね。 主張しない日本の女性は海外の男性には衝撃的だったんだと思います。 東山千栄子さんの演技もド・ストライクでした。