お父さん、お母さん、お兄ちゃん、弟 思いのたけを思いっきり吐き出して後のほんわり感がとても良く描けている
当時の社会(現代社会も同じだろうけど)は「偉くなること」=出世が、世間一般の最上位の価値なんだよね。で、子供社会の上下関係は力で決まり、大人社会の上下関係は金の有無・権力の有無で決まる。そんな表層を前半でユーモラスに描き、後半で、(重役にへこへこするお父さんを見てしまい、ショックを受けて)子供が感じた矛盾を一挙にお父さんにぶつけるシーンが緊迫感がある。自分自身、子供から同じ質問を真正面からぶつけられたら当惑してしまう。作品内のお父さんもお母さんも同様。上手く説得出来ない。泣きつかれて眠る子供たち、お父さんとお母さんの会話(正答が分からない)、でもでも、眠る兄弟に対するお父さんの優しい眼差しがとても安心した。翌朝も、庭でふてくされてご飯を食べない兄弟に、お握りを握るお母さん、差し出すお父さん、兄をチラ見しながらも空腹に耐えかねて手を出す弟、もう意地を通す必要もなくなった弟。あ~、何かが解けてったなぁ。理論的に説得するよりも、心が寄り添う瞬間こそ、人が動く瞬間なんだよなぁ、そんなこんなを上手く描写した傑作でした。