ジャンルを超えたクロスオーバーな魅力にあふれた作品で、人を選ぶ傾向が
あるかもしれないが、私はたいへん気に入った。
基本はホラー映画だが、ジェリー(R・レイノルズ)視点で物語が進む。精神的には
あちらの世界に行ってしまっている。飼っている猫と犬と普通に会話する。平和な
気分の時は、コメディタッチで、会社の女性と話をする時はラブコメになる。この
会社はバスタブの製造メーカーで、華やかなピンクがイメージカラー、構内を
ピンクのフォークリフトが走り回る、まるでミュージカルシーンのよう。
このジェリーが職場の女性をデートに誘うが、すっぽかされてしまう。たまたま
女性のクルマがエンコしてしまい、めぐりめぐってジェリーのクルマに同乗する。
この待ちぼうけがジェリーの変調を招き、森から鹿が飛び出し、クルマのフロント
ガラスに激突。瀕死の鹿の声を聞き、完全にあちらの世界へ飛ぶ…。
ホラー映画としてはユーモラスに女性の解体が始まり、肉塊をタッパーに小分けし、
ブロック壁のように積み上げる。生首だけは冷蔵庫へ格納。やはり生首はジェリー
に話しかける。血糊ベッタリでかなりグロテスクなはずだが、ジェリーに聞こえる
声は穏やかで普通の会話と変わらない。全編通して、ジェリーと語る犬と猫の
役割が主要なトーンとなっている。レイノルズの役作りもサイコキラーというより
変人ジェリーそのもの。
エンドロールのカラフルな衣装で再登場の人物たちによるミュージカルシーンは、
説明のしにくい本作のコミカルな解説になっている。インド映画みたいだが、
監督はイラン出身の女性で、フランスでマンガ家デビューした人という(WIKI)。
世界はますます狭くなって行く。