備忘メモ:
最初の方のシーン・カット・編集は、石井裕也監督としては、挑戦的だと私には映った。赤い光がぼおっと移り高層ビル街の光景となる、時々右半分だけの映像、、、
現代人はスマホばかり見ているので下ばかり見ている→上空を浮かび通り過ぎる飛行船など眼中に無い→そんなものに二人で気付けたら嬉しい!
ずっと路上で歌い続けてた(ちょっと下手めな)女性の宣伝カーを見た時の二人の衝撃が、また嬉しい。
こうやって、二人だけの共感が持てるのが、何よりも親近感が増す。
↑そこまでに至る二人の人生は辛い。
母の自殺を「自分は捨てられた」とトラウマに感じる美香(石橋静河)、元カレ(三浦貴大)にも捨てられた。でも、元カレの様子を見ると、どうも彼が捨てた感じでは無さそう。でも、感受性が全然違うし、美香を受け入れる度量が無かった。美香は、捨てられているばかりの人生なので、傷つくまいと一生懸命強がっている・バリアを張っている。慎二(池松壮亮)は、自分が戸惑うと早口になる、右目の視力が殆ど無い、そんな人物設定だが、シンプルにものを見る度量がある。慎二には、美香を受けとめる度量があった、美香のペースなりに。
本当の自分の気持ちとは反対の行動をとってしまう二人なので、本音に近づいた時の心の揺れが面白く、上手く表現されていた。ここが、私が当作品を好きになった最大のポイント。
いや~、でも人生辛いねぇ、慎二の作業場同僚の様子を見ていると、、、日本の底辺に暮らしている人々を描いている。こんな状況で、幸せって何?を考え抜いた作品だった。ふっと美香の頭に手を乗せる慎二、「ありがとう」と涙ぐむ美香。もう「ああでもない、こうでもない」と愚痴る彼女はいなくなるだろう。素の自分を受け入れてくれる人が傍にいてくれるのだから。
走る走る慎二、美香に早く会いたくて。