かつて同郷の幼馴染だった主人公とヘミの再会がオープニング。
彼は一見して彼女と分からないほどのレベルで整形してキャンペンガールをしている。
同郷では主人公が彼女をブスと言っていたことを彼女はいまだに忘れない。
主人公はもちろんそんなことは忘れていて、彼女の誘いに応じて飲みに行き再会を喜ぶ。ここまででヘミが主人公に好意を寄せていたことがわかる。
彼女はケニアに旅行する際に飼っている猫のエサやりを彼に頼み、自宅に招いてセックスする。
彼女がどこか尻軽で軽薄な印象を与えつつ、主人公との関係性を結ぶ。
ところが彼女が帰国するので空港に迎えに行くと、現地で唯一の韓国人同士だったというベンと仲良く二人でいる。
ベンは何を仕事にしてるかわからないが、金持ちで主人公は圧倒される。ヘミはベンの豊かな住居やポルシェといった金持ちぶりとスマートなライフスタイルぶりにぞっこんなようだ。
一方で作家を目指す主人公は誰も住まなくなった田舎の実家に戻り、刑事事件で収監されている父親の裁判やアルバイトといった生活に追われている。
ここまでは韓国の格差社会の一端を描いた凡庸な展開だ。
ある日主人公の家に突然ベンとヘミが訪ねてくる。そこでゆっくりと大麻を吸い灰になったところで、ベンはビニールハウスを焼くのが趣味だと突然告白する。
その告白は彼の主観としてビニールハウスが焼かれることを望んでいるかのように時が熟して彼が手を下すのだという。
ここでベンが2か月ぐらいの間隔で焼くという対象がビニールハウスだけなのか大いに疑問に思う。ベンは焼いていい対象として汚れて最早役立たずのビニールハウスを象徴として言ったのだろう。
なぜ彼が主人公にそのようなことを言ったのか判然としないが、おそらく焼く(殺す、捨てる)対象としてヘミをみなすようになったことを、主人公に隠喩として伝えたのではないかと考えられる。
その日ヘミとベンが車で帰った日以降ヘミの消息が途絶える。
主人公はベンを怪しみ、尾行するがベンはそれを先回りして彼を自宅に招き入れたりする。
そこでヘミの腕時計やかつてヘミが買っていたと思われる猫を発見する。ベンの関与を主人公は確信する。
そして主人公はベンをヘミといると告げて呼び出し、彼を殺し車ごと焼く。主人公はかえり血を浴び着ているものをすべて脱ぎ捨て真っ裸で自分が乗ってきたトラックに乗って逃亡する。
ただここで疑問なのはもしベンがヘミを殺したのだとしたら、ヘミと一緒だという主人公の呼び出しににノコノコ出かけるだろうか?
本作は村上春樹の短編を原作としているが、原作の余白を大幅に伏線を膨らませたものとなっている。
それが一種のミステリーと白昼夢のような効果を生じさせていて最後まで飽きさせない作品としていた。