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ユーロスペース、シネマヴェーラ、オーディトリウム渋谷。映画美学校は、東京の映画ファンにはおなじみの3つのミニシアターが入ったビルの1階にある。「学校」というよりも、「映画館に来た」という雰囲気だろう。そんな映画好きにはこの上なく贅沢な環境で映画を学ぶフィクション・コース初等科は、映画づくりの経験のない人が対象。カリキュラムがコースに分かれていないので、シナリオや演出と並行して撮影・録音といった技術も習得しながら、「やりたいことを形に」を目指していける。入学時に自分が何を目指すのか分からない人でも、講師との対話を続けるなかで、自分のやりたいこと作りたいものが少しずつあぶり出されていくそうだ。授業講義は平日の夜と週末に組まれているので、学生だけでなく社会人も無理なく通えて嬉しい。
「映像業界を目指す人たちが落語を学ぶ?」
学校見学として訪れたUTBでまず案内されたのは、なんと落語の授業。半信半疑で向かった教室では若手落語家の春風亭昇々さんが「落語とは?」という内容で講義の真っ最中だった。登場する人物やストーリーの構成について、笑いを交えての話がつづく。「はたして、この授業の目的は?」。見学後、スタッフの松澤和行さんに疑問をぶつけてみた。
「最終的にディレクターを目指すのであれば、いろんなことを知っていないといけない。映像制作の基礎を教えることはもちろんですが、授業の中でそれ以上の〝知識〟を身につけ、さらに実際の撮影現場に出かけて〝知恵(経験値)〟を磨いてもらうという方針でやっています。
また映像業界人である前に、一人の社会人にならなればなりません。メールの書き方や名刺の受け渡し方から飲み会のセッティング方法など、普通は社会に出てから学ぶことも、当校ではカリキュラムに組み込まれています」
落語の授業もその一貫。伝統芸能である落語と現在のエンタテインメントとのつながりを理解するとともに、話の構成や落語家の話術、プレゼンテーション能力などを学んでほしいという。実は映像演出のテクニックも落語には隠されているとのこと! そのほかにも、ボイストレーニングなど、〝映像制作〟の枠にとらわれない授業が開講中。さらには、国外で活動の可能性を広げたいという希望者は、グループのネットワークを生かしたUTBハリウッド(TV放送局)での研修や姉妹校への留学も可能だ。
「就職に必要な〝社会人力〟を身につける」という同校の戦略は時代に合わせて進化し続けている。
「映画クリエイターコース(つくる)と映画ディストリビューターコース(みせる)の卒業生たちの活躍が、年を追うごとに目立ってきています」と語る同校主宰の武藤起一さん。今や日本を代表する監督のひとりとなった深川栄洋さんを筆頭に、長篇作品を劇場公開する卒業生が続々登場している背景には映画のデジタル化があるという。「フィルムに比べ技術的にも簡単ですし、低予算でできるので、ある程度の力がつけば、長篇で勝負することができる。そこでいい映画ができれば劇場公開へとつながります」と太鼓判を押す。映画クリエイターコースを終えた卒業生は制作部に所属し、学校の機材や設備を使いながら作品作りが続けられるというシステムも心強い。
一方、劇場公開作品の増加により、宣伝のできる人材への求人は引きも切らない。映画ディストリビューターコースでは、こうした業界のニーズに応えるため、〝映画をみせる仕事〟の基礎を徹底的に叩き込む。今回、グループごとに行うプレゼンテーションの授業を見学させていただいたが、映画の長所や短所を分析し、それに合わせた宣伝計画を発表する受講生たちに対する、講師陣からの実践的な質問と鋭い指摘が印象的だった。「宣伝計画で大事なのはターゲットとセールスポイントだということを、しつこいくらいに言っています」と、武藤さん。「やる気さえあれば、映画業界に入ることは難しくない」という言葉に勇気を得て、最近では関西や東北など、地方から通ってくる受講生も増えているそうだ。
映画業界への一歩を踏み出すための頼もしいバックアップ体制がここにある。