明暦3年、江戸最大の遊郭・吉原が生まれ変わり、幕が開ける夜。若き剣士、松永誠一郎（堤真一）は、師であり育ての親である剣豪・宮本武蔵の遺言により、吉原を設立した庄司甚右衛門を訪ねるため肥後の山中から江戸へと向かう。途中、奇妙な老人・幻斎（藤村俊二）から「吉原はこの世の極楽だよ。そして地獄かな」と言葉を掛けられる。浅草日本堤から広がる吉原に到着した誠一郎は、新吉原お披露目の賑々しく絢爛豪華な花魁道中に遭遇する。吉原一と名高い高尾太夫（京野ことみ）の美しさに圧倒され、色香漂う勝山太夫（松雪泰子）に心惹かれる一方、華やかさの裏にある何かに胸が騒ぐ誠一郎。そんな彼の前に、秘密組織・裏柳生の総帥・柳生義仙（古田新太）が現れる。彼は、吉原設立にまつわる神君御免状を狙っていた。誠一郎は人を斬ることを望まない心優しき男だったが、義仙の殺気にやむを得ず刀を抜く。吉原を見回る旗本・水野十郎左衛門（梶原善）、柳生家当主・柳生宗冬（橋本じゅん）、義仙の忠臣・狭川新左衛門（粟根まこと）のそれぞれの思惑が露わになり、誠一郎の出生の秘密が明らかになる。幻斎は吉原に隠された秘密を誠一郎に伝えようと、紀伊熊野の八百比丘尼（高田聖子）の手を借りることに。誠一郎は、支配とは無縁に生きてきた自由の民・道々の輩への為政者による謂れなき迫害を目の当たりにする。誠一郎は辛く哀しい過去を辿りながら、誇り高き道々の輩に心を重ねていく。華やかな吉原の裏に隠された秘密、裏柳生の狙う神君御免状の謎、そして勝山太夫との秘恋と壮絶な別れがつながった瞬間、心優しき剣士は、かつてない激情に駆られ、鬼と化すのだった……。