「人生の歩みは緩慢すぎる自らの手で速めねば……」。アラン(モーリス・ロネ)はアルコール中毒で入院療養中、死にとりつかれていた。壁の鏡には、7月23日の文字。彼の人生最期の日だ。鏡の周囲には、彼を愛さなかった妻の写真、マリリン・モンローの自殺記事の切り抜き、悲惨な事件の切り抜き……。アランは拳銃の弾丸を点検する。翌日、パリに出たアランは旧友を再訪した。安定した家庭生活を送る友、だが、彼はその凡庸さを嫌悪する。エヴァ(ジャンヌ・モロー)らは麻薬に日々を送る退廃。物事を待つだけの希望と虚偽の青春。待ちくたびれ荒廃に絶望を感じるのはアランだけなのだろうか。昔なじみのソランジュ(アレクサンドラ・スチュワルト)が催す晩餐会。彼女の優しさも、アランの孤独感をつのらせるばかりだった。翌朝、療養所に戻ったアランは、読みかけの本の最後の頁を読み終えると、静かにピストルの引き金をひく。「ぼくは自殺する。君達もぼくを愛さず、ぼくも君達を愛さなかったからだ。だらしのない関係を緊め直すため、君達のぬぐいがたい汚点を残してやる」。今、自ら生きたいと思っていたその希望が去り、アランは静かに生きることをやめた。